状態自尊感情尺度の作成の試み

「問題」 本研究の目的は状態自尊感情尺度の開発である. 自尊感情については, 多方面から研究が行われているが, 近年では自尊感情を, 日常生活の様々な出来事に対応して変動する自尊感情である“状態自尊感情(state self-esteem)”と状況および時間を通じた平均レベルの自尊感情である“特性自尊感情(trait self-esteem)”に分けて捉える研究者も増加している. たとえばLeary, Tambor, Terdal & Downs(1995)は, 自尊感情は他者から受容されている程度および拒否されている程度を監視するシステムであるというsociometer theory...

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Published inパーソナリティ研究 Vol. 14; no. 1; pp. 125 - 126
Main Authors 阿部, 美帆, 今野, 裕之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本パーソナリティ心理学会 2005
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Summary:「問題」 本研究の目的は状態自尊感情尺度の開発である. 自尊感情については, 多方面から研究が行われているが, 近年では自尊感情を, 日常生活の様々な出来事に対応して変動する自尊感情である“状態自尊感情(state self-esteem)”と状況および時間を通じた平均レベルの自尊感情である“特性自尊感情(trait self-esteem)”に分けて捉える研究者も増加している. たとえばLeary, Tambor, Terdal & Downs(1995)は, 自尊感情は他者から受容されている程度および拒否されている程度を監視するシステムであるというsociometer theoryを検証するための実験を行い, 状態自尊感情が受容経験によって上昇し, 拒否経験によって下降することを明らかにしている. また, 小塩(2002)は自尊感情の変動性と自己愛傾向の関連に注目し, 自己愛傾向の下位側面に自尊感情レベルを高める要因と抑制する要因があることを指摘している. このように状態自尊感情に関する研究が増加しているにも関わらず, 状態自尊感情を測定する共通のツールは今のところ存在しない. 状態自尊感情の測定を目的として開発された尺度としては, Heatherton & Polivy(1991)のstate self-esteem scaleがあげられる. この尺度は信頼性・妥当性とも確認されているものの, 広く使用されているRosenberg(1965)の自尊感情尺度と異なって, 多次元的な尺度であることもあり, 現在のところ広く使用されてはいない.
ISSN:1348-8406
1349-6174
DOI:10.2132/personality.14.125