移動性精巣の経過観察中に発生した小児精巣成熟奇形腫の1例

「要旨」1歳3か月, 男児, 主訴は右陰嚢腫大. 生後7か月時より右移動性精巣に対して外来経過観察中, 右陰嚢の腫大を認めた. 右陰嚢内に表面平滑で弾性硬の腫瘤を触知し. 超音波検査で嚢胞を有する長径約2cmの腫瘤性病変を認めた. 術前診断として精巣捻転後変化もしくは良性精巣腫瘍が考えられ, 手術の方針となった. 手術は陰嚢アプローチで腫瘤を摘出し, 術中迅速病理検査では悪性所見を認めず, 精巣を温存した. 病理学的所見にて, 嚢胞は線毛・立方・扁平上皮に覆われ, 嚢胞壁内に気管支腺様構造や軟骨組織, 脳組織を認めたため, 成熟奇形腫と診断した. 術後半年経過し, 患側精巣の萎縮や腫瘍の再発は...

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Published in日本小児外科学会雑誌 Vol. 58; no. 5; pp. 804 - 808
Main Authors 出口幸一, 堺貴彬, 五味卓, 正畠和典, 渡邊美穂, 野村元成, 神山雅史, 上野豪久, 田附裕子, 奥山宏臣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児外科学会 20.08.2022
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Summary:「要旨」1歳3か月, 男児, 主訴は右陰嚢腫大. 生後7か月時より右移動性精巣に対して外来経過観察中, 右陰嚢の腫大を認めた. 右陰嚢内に表面平滑で弾性硬の腫瘤を触知し. 超音波検査で嚢胞を有する長径約2cmの腫瘤性病変を認めた. 術前診断として精巣捻転後変化もしくは良性精巣腫瘍が考えられ, 手術の方針となった. 手術は陰嚢アプローチで腫瘤を摘出し, 術中迅速病理検査では悪性所見を認めず, 精巣を温存した. 病理学的所見にて, 嚢胞は線毛・立方・扁平上皮に覆われ, 嚢胞壁内に気管支腺様構造や軟骨組織, 脳組織を認めたため, 成熟奇形腫と診断した. 術後半年経過し, 患側精巣の萎縮や腫瘍の再発は認めていない. 小児精巣疾患の外来経過観察中に陰嚢腫大を認めた場合, 精巣腫瘍の合併も念頭に置くべきである.
ISSN:0288-609X
DOI:10.11164/jjsps.58.5_804