肝損傷後の胆汁嚢腫が下大静脈を圧迫した1例

鈍的肝損傷に対する保存的治療の経過中, 肝内胆汁嚢腫が下大静脈 (IVC) を圧迫しショックを生じたと考えられた症例を経験した。20歳の男性。高さ約1mのカウンター上から床へ墜落して胸部と顔面を打撲した。頬骨骨折の診断で帰宅したが, 右季肋部痛が改善せず受傷後17日目に再び受診した。腹部造影CTで肝損傷 (S5,7,8 日本外傷学会分類 Ib, OIS Grade III), IVCの平坦化, 門脈と胆嚢周囲の低吸収域が認められた。受傷後40日目, 歩行中にふらつきを感じショックに陥った。胆汁嚢腫に対して経皮的ドレナージを行い, 胆汁性の排液を約1,200ml得た。翌日のCTでは, IVCの平...

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Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 18; no. 9; pp. 659 - 664
Main Authors 池田, 弘人, 森村, 尚登, 坂本, 哲也, 多河, 慶泰, 高橋, 宏樹, 新福, 玄二, 西田, 昌道
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 2007
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ISSN0915-924X
1883-3772
DOI10.3893/jjaam.18.659

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Summary:鈍的肝損傷に対する保存的治療の経過中, 肝内胆汁嚢腫が下大静脈 (IVC) を圧迫しショックを生じたと考えられた症例を経験した。20歳の男性。高さ約1mのカウンター上から床へ墜落して胸部と顔面を打撲した。頬骨骨折の診断で帰宅したが, 右季肋部痛が改善せず受傷後17日目に再び受診した。腹部造影CTで肝損傷 (S5,7,8 日本外傷学会分類 Ib, OIS Grade III), IVCの平坦化, 門脈と胆嚢周囲の低吸収域が認められた。受傷後40日目, 歩行中にふらつきを感じショックに陥った。胆汁嚢腫に対して経皮的ドレナージを行い, 胆汁性の排液を約1,200ml得た。翌日のCTでは, IVCの平坦化と門脈周囲の低吸収域は消失していた。ショックの原因は断定できないが, IVC圧迫が静脈還流を減少させた可能性があり, 鈍的肝損傷に対し保存的治療を行うにあたり注意を要する。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.18.659