MSUの日本への導入と運用における問題点と展望

Mobile stroke unit(MSU)は頭部コンピュータ断層撮影(CT)装置と遠隔通信装置を備えたドクターカーで,現在欧米を中心に運用されている。MSUにより,救急要請現場または救急車との合流点で,脳卒中の診断と治療が行われ,適切な搬送先が決定される。MSUは地域の病院前救護体制に応じて必要とされる。MSUによる脳梗塞患者への組織プラスミノゲン活性化因子治療は,通常救急搬送と比較したドイツと米国の多施設前向き試験により,予後改善効果が有意に高いことが2021年に報告された。しかし日本ではMSUに搭載可能なCT装置は現在まで未承認であり,MSU導入の大きな障壁となっている。米国では高い運...

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Published in日本臨床救急医学会雑誌 Vol. 25; no. 5; pp. 767 - 781
Main Authors 河野, 元嗣, 廣木, 昌彦, 三澤, 雅樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床救急医学会 31.10.2022
日本臨床救急医学会
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ISSN1345-0581
2187-9001
DOI10.11240/jsem.25.767

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Summary:Mobile stroke unit(MSU)は頭部コンピュータ断層撮影(CT)装置と遠隔通信装置を備えたドクターカーで,現在欧米を中心に運用されている。MSUにより,救急要請現場または救急車との合流点で,脳卒中の診断と治療が行われ,適切な搬送先が決定される。MSUは地域の病院前救護体制に応じて必要とされる。MSUによる脳梗塞患者への組織プラスミノゲン活性化因子治療は,通常救急搬送と比較したドイツと米国の多施設前向き試験により,予後改善効果が有意に高いことが2021年に報告された。しかし日本ではMSUに搭載可能なCT装置は現在まで未承認であり,MSU導入の大きな障壁となっている。米国では高い運用コストに加えて診療報酬が未確定であることで,MSU運用の財政的な危機に陥っている。本論文では,MSUの必要性,導入と運用の実際および日本導入に向けた課題と展望をまとめた。
ISSN:1345-0581
2187-9001
DOI:10.11240/jsem.25.767