電気ショック抵抗性心室細動に対する薬物治療-ニフェカラントとアミオダロンの効果比較からみえるもの

心室細動は,可及的速やかな電気的除細動がもっとも優先されるべき治療である.自動体外式除細動器(automated external defibrillator: AED)の普及に伴い,心室細動による心肺停止患者の生存率は改善してきた.電気ショックが無効な電気ショック抵抗性心室細動の患者では,さらなる抗不整脈薬による治療が必要であるが,最適な抗不整脈薬使用方法についてはいまだ確立されていない.ニフェカラントはピリミジンジオン骨格をもつ純粋なカリウムチャネルブロッカーである.日本では致死性の心室性不整脈に対して,1999年にニフェカラント静注薬が保険収載され,Ⅲ群の静注抗不整脈薬として広く用いられ...

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Published inJOURNAL OF UOEH Vol. 38; no. 1; pp. 35 - 46
Main Authors 長田, 圭司, 相原, 啓二, 原山, 信也, 二瓶, 俊一, 佐多, 竹良, 蒲地, 正幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 学校法人 産業医科大学 01.03.2016
産業医科大学
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ISSN0387-821X
2187-2864
DOI10.7888/juoeh.38.35

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Summary:心室細動は,可及的速やかな電気的除細動がもっとも優先されるべき治療である.自動体外式除細動器(automated external defibrillator: AED)の普及に伴い,心室細動による心肺停止患者の生存率は改善してきた.電気ショックが無効な電気ショック抵抗性心室細動の患者では,さらなる抗不整脈薬による治療が必要であるが,最適な抗不整脈薬使用方法についてはいまだ確立されていない.ニフェカラントはピリミジンジオン骨格をもつ純粋なカリウムチャネルブロッカーである.日本では致死性の心室性不整脈に対して,1999年にニフェカラント静注薬が保険収載され,Ⅲ群の静注抗不整脈薬として広く用いられてきた.アミオダロン静注薬は2007年に日本でも使用可能となったが,アミオダロンはカリウムチャネルのみならずナトリウム・カルシウムチャネル遮断作用も有し,さらに受容体,自律神経活動や甲状腺機能などに対してもさまざまな作用を有している.ニフェカラントとアミオダロンには多くの薬理学・薬力学的差違が存在する.ニフェカラントは陰性変力作用を有さず,迅速な効果発現と短い血中半減期での迅速なクリアランスが特徴であり,心肺蘇生における薬物使用においてはアミオダロンより有用である可能性がある.実際に,今まで報告されているニフェカラントとアミオダロンを直接比較した臨床研究や動物実験の結果においては,電気ショック抵抗性心室細動症例に対して,ニフェカラントはアミオダロンと同等か,あるいはそれ以上の効果を有している可能性が示唆される.またアミオダロンは投与量にも留意すべきであり,電気ショック抵抗性心室細動に対しての300 mgのボーラス投与は過量投与となり,蘇生成功率を低下させている可能性も否定できない.電気ショック抵抗性心室細動に対するニフェカラントとアミオダロンの効果の差違の評価,また最適なアミオダロンの投与量の決定には,さらなる臨床研究が必要である.
ISSN:0387-821X
2187-2864
DOI:10.7888/juoeh.38.35