病歴聴取からリンチ症候群を疑い確定診断に至った早期直腸癌の1 例

【背景】リンチ症候群の診断において,家族歴の聴取は疾患拾い上げの重要な要素であるが,内視鏡治療が可能な早期大腸癌の場合,診療を担当する内視鏡医が病歴や詳細な家族歴を聴取できていることは少ない.今回我々は,治療前の病歴,家族歴聴取よりリンチ症候群を疑い,遺伝学的検査にて確定診断にいたった症例を経験したので報告する.【症例】症例は60歳女性,42歳で卵巣癌の手術既往がある.検診で便潜血陽性を指摘され,紹介医で大腸内視鏡検査を受けたところ,下部直腸に隆起性病変を指摘された.病理組織検査で直腸癌と診断され,精査加療目的で当院紹介となった.精査後にESDを施行し,治癒切除が得られた.術前の家族歴聴取で,...

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Published in家族性腫瘍 Vol. 18; no. 1; pp. 8 - 11
Main Authors 堀, 伸一郎, 金子, 景香, 松山, 裕美, 宮脇, 聡子, 井上, 実穂, 竹原, 和宏, 小林, 成行, 大住, 省三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本家族性腫瘍学会 2018
一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
The Japanese Society for Hereditary Tumors
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Summary:【背景】リンチ症候群の診断において,家族歴の聴取は疾患拾い上げの重要な要素であるが,内視鏡治療が可能な早期大腸癌の場合,診療を担当する内視鏡医が病歴や詳細な家族歴を聴取できていることは少ない.今回我々は,治療前の病歴,家族歴聴取よりリンチ症候群を疑い,遺伝学的検査にて確定診断にいたった症例を経験したので報告する.【症例】症例は60歳女性,42歳で卵巣癌の手術既往がある.検診で便潜血陽性を指摘され,紹介医で大腸内視鏡検査を受けたところ,下部直腸に隆起性病変を指摘された.病理組織検査で直腸癌と診断され,精査加療目的で当院紹介となった.精査後にESDを施行し,治癒切除が得られた.術前の家族歴聴取で,父が46歳で直腸癌,兄に45歳で大腸癌の罹患歴があり,アムステルダム基準Ⅱ,改訂ベセスダガイドラインを満たしていた.遺伝カウンセリングを行った後,遺伝学的検査をおこなったところ,ミスマッチ修復遺伝子MSH2におけるExon 1-6の欠失を認め,リンチ症候群と確定診断した.以後,関連癌のサーベイランスを行い,経過観察中である.早期直腸癌の段階でリンチ症候群を診断し,早く関連癌のサーベイランスが開始されることは,患者に大きな利益をもたらすと考えられ,内視鏡医による家族歴聴取と拾い上げの重要性を再認識した.
ISSN:1346-1052
2189-6674
DOI:10.18976/jsft.18.1_8