骨盤内手術におけるcadaver dissectionの活用法

腹腔鏡手術やそれに続くロボット手術の登場により, 骨盤内の解剖学的構造物を拡大視野で明視し, 精緻な手術操作が可能となった. 経験によって培った手術手技や術後機能評価に対して疑問を生じたとき, それを解決する手法がcadaverを用いた外科解剖である. cadaverを用いた肉眼解剖, 外科解剖, 顕微鏡的解剖を行い, これらの知見を蓄積し, さらに相互的に関連付け, 癌制御と機能温存を目指した新たな術式が論理的に確立される. 本稿では, 具体例としてDenonvilliers fasciaの研究によって導かれた直腸癌手術における神経温存術式の確立とRARPにおける神経温存術式の確立に至る陰茎...

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Published inJapanese Journal of Endourology Vol. 32; no. 1; pp. 6 - 13
Main Authors 村岡, 邦康, 森實, 修一, 本田, 正史, 武中, 篤
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本泌尿器内視鏡学会 01.04.2019
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ISSN2186-1889
2187-4700
DOI10.11302/jsejje.32.6

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Summary:腹腔鏡手術やそれに続くロボット手術の登場により, 骨盤内の解剖学的構造物を拡大視野で明視し, 精緻な手術操作が可能となった. 経験によって培った手術手技や術後機能評価に対して疑問を生じたとき, それを解決する手法がcadaverを用いた外科解剖である. cadaverを用いた肉眼解剖, 外科解剖, 顕微鏡的解剖を行い, これらの知見を蓄積し, さらに相互的に関連付け, 癌制御と機能温存を目指した新たな術式が論理的に確立される. 本稿では, 具体例としてDenonvilliers fasciaの研究によって導かれた直腸癌手術における神経温存術式の確立とRARPにおける神経温存術式の確立に至る陰茎海綿体神経の研究について解説した. 臨床医学におけるcadaver活用は, 新たな術式の開発のみならず, 医療機器開発の推進も期待できる新たなアプローチである. 臨床応用への前段階の役割として, それらの安全性・有効性の評価が必須であり, 健常なヒトに極めて近いfresh cadaverを用いることで, 人体にどのような影響を与えるかを精査することは非常に重要である. 海外ではcadaverを用いたcadaver trainingが, 外科領域全体の医療安全や教育効果の面での有用性が示されている. 論理的な術式の確立, 安全な医療技術の普及のための外科教育, 医療機器改発の推進のために, 今後, 様々な施設でcadaverを活用できる環境が整備されることを期待する.
ISSN:2186-1889
2187-4700
DOI:10.11302/jsejje.32.6