初療室で緊急手術を行った側腹部杙創の1例

35歳,男性。約3mの屋根から墜落し,4×4×80(cm)のアルミ角材が右側腹部に刺入した。呼吸循環動態は安定していたが,創部から持続的な出血を認めた。角材が大きく術前にCT施行できず,やむを得ず単純撮影の情報のみで緊急手術とした。腹部正中切開で開腹したところ,腹壁貫通創と外側区域の肝損傷(日本外傷学会分類Ⅱ型)を認めた。止血は得られていたので腹腔内の観察・洗浄と刺入部の縫合のみ行い腹部開放管理,翌日に止血を確認後閉腹,経過良好で第11日病日退院とした。杙創は高所墜落や転倒による殿部への体幹垂直方向の受傷が多く,体幹側方からは少数である。刺入物を抜去せず搬送されることが多く,その大きさや性状に...

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Published in日本臨床救急医学会雑誌 Vol. 24; no. 4; pp. 583 - 587
Main Authors 伊澤, 祥光, 新庄, 貴文, 遠藤, 和洋, 窪木, 大悟, 松村, 福広, 米川, 力, 渡邊, 伸貴, 間藤, 卓, 田中, 保平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床救急医学会 31.08.2021
日本臨床救急医学会
Subjects
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ISSN1345-0581
2187-9001
DOI10.11240/jsem.24.583

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Summary:35歳,男性。約3mの屋根から墜落し,4×4×80(cm)のアルミ角材が右側腹部に刺入した。呼吸循環動態は安定していたが,創部から持続的な出血を認めた。角材が大きく術前にCT施行できず,やむを得ず単純撮影の情報のみで緊急手術とした。腹部正中切開で開腹したところ,腹壁貫通創と外側区域の肝損傷(日本外傷学会分類Ⅱ型)を認めた。止血は得られていたので腹腔内の観察・洗浄と刺入部の縫合のみ行い腹部開放管理,翌日に止血を確認後閉腹,経過良好で第11日病日退院とした。杙創は高所墜落や転倒による殿部への体幹垂直方向の受傷が多く,体幹側方からは少数である。刺入物を抜去せず搬送されることが多く,その大きさや性状によりCT撮影が困難もしくは不可能な場合がある。体幹側方の場合はその可能性が高まる。手術には万全の体制で臨むとともに,平時より外傷手術のシミュレーションなどを活用して緊急開腹手術のトレーニングや研修を積む重要性を再認識した。
ISSN:1345-0581
2187-9001
DOI:10.11240/jsem.24.583