メタロチオネインを介したストレス応答—生体防御システムの中での役割

メタロチオネイン(MT)は1957年にMargoshesとValleeによリウマの腎臓中に見出された低分子量の重金属結合タンパク質であり, その構成アミノ酸の約1/3がシステインであるという独特な一次構造を有する. MTに関する研究は, その際だった構造的特徴に触発されたタンパク質化学的研究, 重金属曝露による健康障害への抵抗性や必須金属のホメオスタシスに関連した生物学的意義の研究, ストレス応答のモデルとしての転写誘導メカニズムの研究など, 多彩な視点から進められてきた. 哺乳類MTの構造と金属の結合に関する研究からは, 1分子当たり7個の金属イオンにシステインのSH基が配位して独自の金属シ...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 127; no. 4; pp. 663 - 664
Main Author 小泉, 信滋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.04.2007
日本薬学会
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ISSN0031-6903
1347-5231
DOI10.1248/yakushi.127.663

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Summary:メタロチオネイン(MT)は1957年にMargoshesとValleeによリウマの腎臓中に見出された低分子量の重金属結合タンパク質であり, その構成アミノ酸の約1/3がシステインであるという独特な一次構造を有する. MTに関する研究は, その際だった構造的特徴に触発されたタンパク質化学的研究, 重金属曝露による健康障害への抵抗性や必須金属のホメオスタシスに関連した生物学的意義の研究, ストレス応答のモデルとしての転写誘導メカニズムの研究など, 多彩な視点から進められてきた. 哺乳類MTの構造と金属の結合に関する研究からは, 1分子当たり7個の金属イオンにシステインのSH基が配位して独自の金属システインクラスターを形成することが明らかにされ, これがMTの生物学的機能を実現するための構造的基盤であることが示された. MTが細胞の存続にとって重要な生物学的役割を担うものであろうことは, 各臓器において普遍的な発現が認められることからも想像されたが, MTが亜鉛や銅のような必須金属を結合すること, またそれらの金属により発現が誘導されることから, 細胞内の必須重金属のホメオスタシスがその主たる機能であろうと考察された.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.127.663