シングルセル解析で得られたマルチオミックスデータにおける次元削減手法の比較

近年単一の細胞からマルチオミックスデータを得ることが可能となってきた。これにより個々の細胞の状態をマルチオミックスの観点から観測することができるようになり、そこから動物科学・育種分野において有用な知見が得られる可能性が出てきた。細胞単位でマルチオミックスデータが得られた場合、一般的には多様かつ多次元のマルチオミックスデータを統合しながら次元削減し、情報を低次元に圧縮する。適切な次元削減手法の選択や新たな手法の開発のためには、既存の手法を比較することが必要であるが、そのような比較研究は少ない。そこで本研究ではシングルセル解析由来の遺伝子発現とクロマチンアクセシビリティから成る2つのマルチオミック...

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Published in動物遺伝育種研究 Vol. 52; no. 2; pp. 27 - 36
Main Authors 小野木, 章雄, 大島, 優紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本動物遺伝育種学会 01.08.2024
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ISSN1345-9961
1884-3883
DOI10.5924/abgri.52.27

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Summary:近年単一の細胞からマルチオミックスデータを得ることが可能となってきた。これにより個々の細胞の状態をマルチオミックスの観点から観測することができるようになり、そこから動物科学・育種分野において有用な知見が得られる可能性が出てきた。細胞単位でマルチオミックスデータが得られた場合、一般的には多様かつ多次元のマルチオミックスデータを統合しながら次元削減し、情報を低次元に圧縮する。適切な次元削減手法の選択や新たな手法の開発のためには、既存の手法を比較することが必要であるが、そのような比較研究は少ない。そこで本研究ではシングルセル解析由来の遺伝子発現とクロマチンアクセシビリティから成る2つのマルチオミックスデータを用いて、複数の次元削減手法を比較した。比較した手法はmultiple co-inertia analysis(MCIA)、multi-omics factoranalysis、single-cell aggregation and integration(scAI)、Seurat、主成分分析及びuniform manifold approximation andprojection の6 つであった。次元削減の有効性は既知の細胞種類が削減された次元でどの程度正確に分類できているかを、シルエット係数を計算することにより評価した。その結果、MCIA とscAI が細胞分類の観点から上位である一方で、計算時間の観点からは他手法に劣る結果となった。以上から、シングルセル解析におけるマルチオミックスデータを統合し次元削減する手法において、細胞分類の正確さと計算時間双方の観点から優れた手法が提案されていないことが示唆された。
ISSN:1345-9961
1884-3883
DOI:10.5924/abgri.52.27