凍結含浸法による形状保持軟化調理食品の嚥下移行食としての適応性

【目的】凍結含浸法を用いた,外観から素材を認識できる軟らかい形状保持軟化調理食品(以下,凍結含浸食)は,新しい介護用食品として商品化が進んでいる.しかし,これまでに摂食嚥下障害者を対象とした評価報告が少なく,安全性や提供する利点に関するエビデンスが不足していた.本研究では,凍結含浸食を摂食嚥下障害者に提供して,安全性評価,喫食量および栄養摂取量の調査,食事に対する印象および感想の調査を行い,嚥下移行食としての適応性を検証した.【方法】対象者は,軽症の摂食嚥下障害者 20名で, 3食を経口のみで栄養摂取可能で,軟らかい刻んだ素材にとろみのある調味液を和えた比較的水分の多い食事(以下,嚥下移行食)...

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Published in日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 22; no. 2; pp. 97 - 107
Main Authors 重松, 孝, 坂本, 宏司, 若﨑, 由香, 中津, 沙弥香, 西村, 立, 大塚, 純子, 金沢, 英哲, 藤島, 一郎, 渡邊, 弥生, 長尾, 菜緒, 柴田, 賢哉, 梶原, 良
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 31.08.2018
日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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ISSN1343-8441
2434-2254
DOI10.32136/jsdr.22.2_97

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Summary:【目的】凍結含浸法を用いた,外観から素材を認識できる軟らかい形状保持軟化調理食品(以下,凍結含浸食)は,新しい介護用食品として商品化が進んでいる.しかし,これまでに摂食嚥下障害者を対象とした評価報告が少なく,安全性や提供する利点に関するエビデンスが不足していた.本研究では,凍結含浸食を摂食嚥下障害者に提供して,安全性評価,喫食量および栄養摂取量の調査,食事に対する印象および感想の調査を行い,嚥下移行食としての適応性を検証した.【方法】対象者は,軽症の摂食嚥下障害者 20名で, 3食を経口のみで栄養摂取可能で,軟らかい刻んだ素材にとろみのある調味液を和えた比較的水分の多い食事(以下,嚥下移行食)を提供されている入院患者から選定した.対象者には,嚥下移行食と凍結含浸食をそれぞれ 7日間ずつ昼食時に提供した.各食初日( 1日目)に嚥下内視鏡検査を実施し,さらに毎食時に,口腔内の残留,飲み込み,むせ,痰のからみを観察して安全性を評価した.喫食量および栄養摂取量は,試験前日と全試験期間の食事について,提供量から残存量を差し引いた値から算出した.食事に対する印象および感想については,試験前日と各食最終日( 7日目)に,調査票を用いて対象者への聞き取りにより調査した.【結果】安全性評価の結果,嚥下移行食と凍結含浸食との間に有意差はなかった.喫食量および栄養摂取量は,主菜および副菜のみで比較すると,凍結含浸食のほうが嚥下移行食よりも提供量が有意に多かったことから,摂取重量,エネルギー,脂質,炭水化物量が嚥下移行食に比べて有意に多かった.食事に対する印象および感想の調査では,凍結含浸食のほうが嚥下移行食に比べて「飲み込みやすい」と「食事が楽しい」の評価が有意に高かった.【結論】凍結含浸食は,従来の嚥下移行食と比べて飲み込みやすく安全な食品であり,軽症の摂食嚥下障害者に提供できると考えられた .
ISSN:1343-8441
2434-2254
DOI:10.32136/jsdr.22.2_97