日常生活における触覚情報を活用したヒトの動作向上について

「1. はじめに」さまざまな姿勢を制御し安定させる能力(以下, 「バランス能力」とする)が低下した場合に引き起こされる日常生活動作の低下や, 動作中における転倒の危険性を考えた場合, バランス能力を維持・向上させる方策を検討することは重要である. そのため, この方策に関する様々な報告が国内外で行われている. 立位時におけるバランス能力には多くの感覚情報が関わるが, 特に視覚や体性感覚の貢献度が大きいとされている. このうち, 体性感覚は, 主に皮膚に受容器のある触・圧・温・冷・痛覚などの表在感覚と, 筋や健の固有受容器による深部感覚であり, その機能は, 自己の姿勢や運動の認識と制御に始まり...

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Published in日本生理人類学会誌 Vol. 23; no. 2; pp. 45 - 52
Main Authors 大下, 和茂, 矢野, 澄雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生理人類学会 2018
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Summary:「1. はじめに」さまざまな姿勢を制御し安定させる能力(以下, 「バランス能力」とする)が低下した場合に引き起こされる日常生活動作の低下や, 動作中における転倒の危険性を考えた場合, バランス能力を維持・向上させる方策を検討することは重要である. そのため, この方策に関する様々な報告が国内外で行われている. 立位時におけるバランス能力には多くの感覚情報が関わるが, 特に視覚や体性感覚の貢献度が大きいとされている. このうち, 体性感覚は, 主に皮膚に受容器のある触・圧・温・冷・痛覚などの表在感覚と, 筋や健の固有受容器による深部感覚であり, その機能は, 自己の姿勢や運動の認識と制御に始まり, 接触する物体の認識, 自己をとりまく3次元空間の認識に関わるとされている. 立位保持には, 下肢からの体性感覚のうち, 主に固有受容器や皮膚の受容器からの情報が重要だと考えられ, 立位時に主働筋への振動刺激により深部感覚(筋紡錘)機能を低下させた場合に姿勢動揺が大きくなることや, 足底触覚の精密さ(二点識別閾)がバランス能力と有意な相関を示すことが報告されている.
ISSN:1342-3215
2432-0986
DOI:10.20718/jjpa.23.2_45