日本人における尿中無機ヒ素代謝産物濃度の個人内・個人間変動

【1. はじめに】 1970年後半以降無機ヒ素(iAs)で汚染された地下水の飲用に伴う健康影響が世界各地で大きな問題となった. 慢性iAs曝露による健康影響で最も重大な問題は発がんであり, ヒトにおいては皮膚, 肺, 肝臓, 腎臓, 膀胱における発がん性が疫学的に示されている[1]. さらに近年ではがんのみならず, 2型糖尿病[2], 心血管疾患[3], 発達[4]との関連が報告されている. 一方, 地下水iAs汚染のない地域においては, 食物が最大の曝露源となる. どのような食品が主な曝露源となっているかこれまでのところ明らかではないが, 一部の海藻類(ひじき)や米が主要な曝露源となる可能性...

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Published inBIOMEDICAL RESEARCH ON TRACE ELEMENTS Vol. 23; no. 1; pp. 33 - 39
Main Authors 小栗, 朋子, 鈴木, 弥生, 久田, 文, 吉永, 淳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本微量元素学会 2012
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Summary:【1. はじめに】 1970年後半以降無機ヒ素(iAs)で汚染された地下水の飲用に伴う健康影響が世界各地で大きな問題となった. 慢性iAs曝露による健康影響で最も重大な問題は発がんであり, ヒトにおいては皮膚, 肺, 肝臓, 腎臓, 膀胱における発がん性が疫学的に示されている[1]. さらに近年ではがんのみならず, 2型糖尿病[2], 心血管疾患[3], 発達[4]との関連が報告されている. 一方, 地下水iAs汚染のない地域においては, 食物が最大の曝露源となる. どのような食品が主な曝露源となっているかこれまでのところ明らかではないが, 一部の海藻類(ひじき)や米が主要な曝露源となる可能性が指摘されていることから[5], われわれ日本人のiAs曝露状況の把握と, 曝露に伴う健康影響を調査することが重要であると考えられる. これまで地下水汚染地域を中心としたiAs曝露による健康影響調査においては, 飲料水中濃度を曝露指標として用いることが多く行われてきた.
ISSN:0916-717X
1880-1404
DOI:10.11299/brte.23.33