急性低音障害型感音難聴における両側性の検討
急性低音障害型感音難聴 (以下ALHL) においては, 突発性難聴と比較して両側例が多いという印象が以前よりもたれていた. 今回この事実を確認し, 病態との関連を検討するため, 山梨大学附属病院耳鼻咽喉科, および関連病院の諏訪中央病院耳鼻咽喉科にて厚生労働省の急性高度難聴に関する調査研究班の診断基準に従い, ALHLと診断され治療を受けた274症例を対象に本症の両側性について検討した. これらの症例のうち臨床症状, 聴力レベルのいずれもが両側であった症例が32例, 少なくともいずれかが, 両側であった症例が76例存在した. ALHL症例の集計報告を渉猟すると文献上でも数%以上の両側例の存在が...
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Published in | 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 108; no. 3; pp. 214 - 221 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
2005
日本耳鼻咽喉科学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0030-6622 1883-0854 |
DOI | 10.3950/jibiinkoka.108.214 |
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Summary: | 急性低音障害型感音難聴 (以下ALHL) においては, 突発性難聴と比較して両側例が多いという印象が以前よりもたれていた. 今回この事実を確認し, 病態との関連を検討するため, 山梨大学附属病院耳鼻咽喉科, および関連病院の諏訪中央病院耳鼻咽喉科にて厚生労働省の急性高度難聴に関する調査研究班の診断基準に従い, ALHLと診断され治療を受けた274症例を対象に本症の両側性について検討した. これらの症例のうち臨床症状, 聴力レベルのいずれもが両側であった症例が32例, 少なくともいずれかが, 両側であった症例が76例存在した. ALHL症例の集計報告を渉猟すると文献上でも数%以上の両側例の存在が示唆された. また今回の集計で, 片側例の健側においても低音部の聴力レベルが高音部のそれに比較して低下する傾向が見られ, 本症における両側性の存在が確認された. しかし一方, 両側例の左右の耳は, その聴力像, グリセオールテスト結果, 予後判定においては必ずしも左右で一致しなかった. 本症の病態はいまだ確立したものではないが. 両側例における左右の病態, およびその程度は必ずしも一致しないことが推測された. 両側例と片側例で, その臨床症状, 検査結果に明らかな差は見られなかったが, その予後において両側例は治癒率が低い傾向が見られた. 本症の診断, 予後判定においては, 聴力レベルのみが両側である症例も含め両側例を考慮した取り扱いが必要であると考える. |
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ISSN: | 0030-6622 1883-0854 |
DOI: | 10.3950/jibiinkoka.108.214 |