食事摂取基準から見たわが国の栄養学研究の在り方

食事摂取基準は食事と栄養素摂取に関連するもっとも基本的かつ包括的なガイドラインである。ガイドラインはその分野の実務家が実務の際に参照すべき指針である。ヒトを対象とするガイドラインには次の3つの要件が求められる。 (1) ヒト集団での知見であること, (2) 確実な知見であること, (3) 実務の役に立つこと, である。栄養学が応用科学であり, すべてのヒトの命と健康を守る公共性を有する科学であるとすれば, 食事摂取基準に代表される食事・栄養関連ガイドラインは明らかに栄養学が責任を持って進めなければならない分野のひとつである。しかしながら, それは, 従来の「発見の科学」や「機序 (メカニズム)...

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Published in日本栄養・食糧学会誌 Vol. 78; no. 1; pp. 5 - 11
Main Author 佐々木, 敏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本栄養・食糧学会 2025
日本栄養・食糧学会
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Summary:食事摂取基準は食事と栄養素摂取に関連するもっとも基本的かつ包括的なガイドラインである。ガイドラインはその分野の実務家が実務の際に参照すべき指針である。ヒトを対象とするガイドラインには次の3つの要件が求められる。 (1) ヒト集団での知見であること, (2) 確実な知見であること, (3) 実務の役に立つこと, である。栄養学が応用科学であり, すべてのヒトの命と健康を守る公共性を有する科学であるとすれば, 食事摂取基準に代表される食事・栄養関連ガイドラインは明らかに栄養学が責任を持って進めなければならない分野のひとつである。しかしながら, それは, 従来の「発見の科学」や「機序 (メカニズム) 解明のための科学」ではなく, 「検証の科学」や「現実社会を観察し現実社会に介入する疫学研究」に拠って立つものである。食事摂取基準を応用科学の一事例として捉えると, 栄養学のひとつの未来像が見えてくるかもしれない。
ISSN:0287-3516
1883-2849
DOI:10.4327/jsnfs.78.5