ショウジョウバエ視細胞の形態決定過程を支配する分子メカニズムとその数理モデル
「1. はじめに」ショウジョウバエの複眼は800個ほどの個眼が蜂の巣状に集合し組織化された結晶様の感覚器官である(図1a). 複眼表面においては4個の錐細胞(cone cell)が個眼の中心において特徴的な細胞塊を形成し, 2つの一次色素細胞(primary pigment cell)がそれを取り囲んでいる. そしてさらにその外側では二次, 三次色素細胞や剛毛細胞が各個眼を網目状に仕切っている. このような構造は一体どのような機構のもとに形成されているのであろうか?錐細胞塊の形態はシャボン玉が形作るパターンに酷似している. したがってその形はシャボン玉と同様, 張力を介した表面積の最小化のよう...
Saved in:
Published in | 生物物理 Vol. 49; no. 6; pp. 290 - 291 |
---|---|
Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本生物物理学会
2009
日本生物物理学会 |
Online Access | Get full text |
Cover
Loading…
Summary: | 「1. はじめに」ショウジョウバエの複眼は800個ほどの個眼が蜂の巣状に集合し組織化された結晶様の感覚器官である(図1a). 複眼表面においては4個の錐細胞(cone cell)が個眼の中心において特徴的な細胞塊を形成し, 2つの一次色素細胞(primary pigment cell)がそれを取り囲んでいる. そしてさらにその外側では二次, 三次色素細胞や剛毛細胞が各個眼を網目状に仕切っている. このような構造は一体どのような機構のもとに形成されているのであろうか?錐細胞塊の形態はシャボン玉が形作るパターンに酷似している. したがってその形はシャボン玉と同様, 張力を介した表面積の最小化のような物理的機構により決定されていると予想される1). その一方で遺伝学的な研究からは, 視細胞の形態決定過程ではカドヘリンとよばれる細胞接着分子が重要な役割を担っていることも示された1). 以上の知見を参考に細胞膜の収縮性と接着性に基づいた視細胞の表面力学モデルが提唱された2). |
---|---|
ISSN: | 0582-4052 1347-4219 |
DOI: | 10.2142/biophys.49.290 |