中国横断山脈でオーミックスペースを齧る

「中国の山奥へ」 キク科リグラリア属(メタカラコウ属)の根にある有機成分(特にテルペン類)の多様性生成メカニズムの研究のため, 2011年も8月の3週間の採集旅行へ行ってきた. 目的地は中国雲南省・四川省の横断山脈地域である. ここはヒマラヤ山脈・チベット高原の東の端で, 山脈が南北に連なる. 金沙江(揚子江)・瀾滄江(メコン川)・怒江(サルウィン川)の三川が並流し, 世界自然遺産にも指定されている. 地勢が複雑なため, 植物の多様化が進んでいるだけでなく, 民族も多様であり, 近年は風景のすばらしさもあって, 観光開発がさかんである. われわれは, そんな地域で, ときには標高5000mもの...

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Published in生物物理 Vol. 52; no. 1; pp. 036 - 037
Main Authors 花井, 亮, 黒田, 智明, 通, 元夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2012
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.52.036

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Summary:「中国の山奥へ」 キク科リグラリア属(メタカラコウ属)の根にある有機成分(特にテルペン類)の多様性生成メカニズムの研究のため, 2011年も8月の3週間の採集旅行へ行ってきた. 目的地は中国雲南省・四川省の横断山脈地域である. ここはヒマラヤ山脈・チベット高原の東の端で, 山脈が南北に連なる. 金沙江(揚子江)・瀾滄江(メコン川)・怒江(サルウィン川)の三川が並流し, 世界自然遺産にも指定されている. 地勢が複雑なため, 植物の多様化が進んでいるだけでなく, 民族も多様であり, 近年は風景のすばらしさもあって, 観光開発がさかんである. われわれは, そんな地域で, ときには標高5000mもの高地に車を走らせ, 見つけたリグラリアを採集して行く. 採集した植物は, 文字通り「草の根を分けて」洗って泥を落とさなければならない. そして, 1回の採集旅行で100個にも達する根のサンプルや標本にカビが生えないよう, 毎晩, 夜半すぎまでヘアドライヤーで乾燥させる作業はたいへんである. しかし, 大学でのさまざまな業務を忘れ, 日本の夏の暑さを避けて, 風景やさまざまな植物の美しさを楽しみながら, 仕事ができることはすばらしい.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.52.036