薬剤誘発性QT延長症候群の予防対策

後天性のQT延長症候群は, ごく普通の医薬品が除脈や低K血症などに伴い時として重症の不整脈をもたらして最悪の場合, 死に至らしめるもので, 比較的頻回にみられる. 一般的な医薬品の使用で予期せぬ重症不整脈を引き起こすことは, 医療従事者のみならず一般社会の人々にとってもとてもショッキングである. 薬害として社会問題になって当然と思われる. その機序の解明あるいは対処法を考えることは, 医療事故を防止するうえで重要かつ緊急の課題であることは間違いない. 薬剤誘発性QT延長症候群に関する社会現象としての最近のトピックスは, 新薬開発の際にすべての薬剤でQT時間延長に関する前臨床や臨床試験を行うこと...

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Published in心電図 Vol. 26; no. 3; pp. 193 - 194
Main Author 神谷, 香一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本不整脈心電学会 2006
日本心電学会
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ISSN0285-1660
1884-2437
DOI10.5105/jse.26.193

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Summary:後天性のQT延長症候群は, ごく普通の医薬品が除脈や低K血症などに伴い時として重症の不整脈をもたらして最悪の場合, 死に至らしめるもので, 比較的頻回にみられる. 一般的な医薬品の使用で予期せぬ重症不整脈を引き起こすことは, 医療従事者のみならず一般社会の人々にとってもとてもショッキングである. 薬害として社会問題になって当然と思われる. その機序の解明あるいは対処法を考えることは, 医療事故を防止するうえで重要かつ緊急の課題であることは間違いない. 薬剤誘発性QT延長症候群に関する社会現象としての最近のトピックスは, 新薬開発の際にすべての薬剤でQT時間延長に関する前臨床や臨床試験を行うことが, グローバルの新薬開発ガイドラインとして決定したことである. 2005年6月ブリュッセルでの日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)での合意に基づき, 臨床ガイドラインE14と前臨床ガイドラインS7Bが最終合意に至り, 欧州と米国ではすでに実行されている(ステップ5). 日本は現在まだその前段階のステップ4にあり, 国内運用の細かい手順を決定しつつあり, 本年中には実施される見込みである. これにより, 世界中で新薬開発の前臨床および臨床試験に心室再分極に関する試験が義務として課され, 早期の臨床試験当初から心電図専門医による徹底した臨床試験(thorough QT/QTc study)を行うことになる.
ISSN:0285-1660
1884-2437
DOI:10.5105/jse.26.193