熱レンズ顕微鏡による非蛍光性単一分子計測

1. はじめに μmスケールの空間 (体積fL:10-15L) で濃度nM (10-9M) の溶液が化学的作用をする場合, その作用をつかさどる分子の絶対量は10-24mol, すなわち単一分子か数個の分子でしかない. 細胞や機能材料などさまざまな分野において, このような微小領域における超微量分析が必要とされている. こういった分析には通常蛍光分子を標識に用いるレーザー蛍光法が利用されているが, 光らない分子を単一分子レベルで分析できれば研究の幅は大幅に広がる. 銀染色を初めとする現行の多くの標識法にも分析対象を拡げられ, 究極的には無標識で分子分布像を得ることも可能となるであろうし, 静止...

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Published in生物物理 Vol. 40; no. 4; pp. 262 - 265
Main Authors 火原, 彰秀, 渡慶次, 学, 佐藤, 記一, 北森, 武彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2000
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.40.262

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Summary:1. はじめに μmスケールの空間 (体積fL:10-15L) で濃度nM (10-9M) の溶液が化学的作用をする場合, その作用をつかさどる分子の絶対量は10-24mol, すなわち単一分子か数個の分子でしかない. 細胞や機能材料などさまざまな分野において, このような微小領域における超微量分析が必要とされている. こういった分析には通常蛍光分子を標識に用いるレーザー蛍光法が利用されているが, 光らない分子を単一分子レベルで分析できれば研究の幅は大幅に広がる. 銀染色を初めとする現行の多くの標識法にも分析対象を拡げられ, 究極的には無標識で分子分布像を得ることも可能となるであろうし, 静止画像だけでなく動的挙動も追跡できるようになるだろう. さらに, 細胞内部のように標識化反応が困難な場合を考えると, 非発光性分子を直接, 超高感度に測定できる方法は必須である. 光を使う分析では, 光を吸収する励起過程を利用する吸光分析法と, 励起状態から光を放出して緩和する過程を利用する蛍光分析法が一般的であるが, 大部分の励起分子は光を出さず緩和する.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.40.262