カルプロテクチンの培養上皮細胞における発現調節

カルプロテクチンはS100A8とS100A9の2つの蛋白複合体から構成される抗菌ペプチドであり,上皮において発現している。カルプロテクチン発現は,炎症性サイトカイン,細菌産物や上皮細胞分化調節因子により調節されている。上皮細胞で恒常的に産生されるインターロイキン-1α( IL-1α) は上皮細胞分化を誘導し,カルプロテクチン発現を上昇させる。上皮細胞の分化は基底膜や結合組織の相互作用により制御されている。本研究では,細胞外基質(ECM)蛋白やIL-1αによるカルプロテクチン発現について検討した。ヒト上皮細胞株HaCaTをECM蛋白(I型とIV型コラーゲン,フィブロネクチン,ラミニン)コートディ...

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Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 49; no. 3; pp. 224 - 232
Main Authors 板東, 美香, 廣島, 佑香, 片岡, 正俊, 木戸, 淳一, 永田, 俊彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 2007
日本歯周病学会
Subjects
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ISSN0385-0110
1880-408X
DOI10.2329/perio.49.224

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Summary:カルプロテクチンはS100A8とS100A9の2つの蛋白複合体から構成される抗菌ペプチドであり,上皮において発現している。カルプロテクチン発現は,炎症性サイトカイン,細菌産物や上皮細胞分化調節因子により調節されている。上皮細胞で恒常的に産生されるインターロイキン-1α( IL-1α) は上皮細胞分化を誘導し,カルプロテクチン発現を上昇させる。上皮細胞の分化は基底膜や結合組織の相互作用により制御されている。本研究では,細胞外基質(ECM)蛋白やIL-1αによるカルプロテクチン発現について検討した。ヒト上皮細胞株HaCaTをECM蛋白(I型とIV型コラーゲン,フィブロネクチン,ラミニン)コートディッシュに播種し,IL-1αの存在,非存在下で培養した。また,基底膜抽出物(マトリゲル)コートディッシュや線維芽細胞フィーダー層でも培養した。カルプロテクチンの発現は,免疫組織染色,ノーザンブロット法およびELISA法により分析した。その結果,4種のECM蛋白ディッシュで培養を行った場合,カルプロテクチン発現に変化は認められなかった。一方,IL-1αは培養ディッシュに関わらずカルプロテクチン発現を有意に上昇させたが,ECM蛋白はこの効果に影響を及ぼさなかった。また,マトリゲルや線維芽細胞フィーダー層ではカルプロテクチン発現の軽度の減少が認められた。これらの結果より,上皮細胞でのカルプロテクチン発現は上皮-間葉系においてサイトカインにより調節されていることが示唆された。
ISSN:0385-0110
1880-408X
DOI:10.2329/perio.49.224