センダイウイルスベクターによる気管狭窄の遺伝子治療

「はじめに」気管狭窄は長期気管挿管, 炎症性疾患, 気管外傷, 熱傷などにより気管粘膜が損傷され, その創傷治癒反応で気管という限られたスペースに過剰な組織の増殖が起こることに起因する. 治療には内視鏡下レーザー切除, バルーン拡張術, 喉頭気管形成術など様々な外科的治療が試みられているが, 複数回の手術や長期の気管切開を要することが多く, 再発率も高いことが問題であった. なぜなら外科的治療自体が粘膜への侵襲であるので, 過剰な創傷反応という悪循環を生みやすいからである. 従って, 傷害を受けた気管粘膜における創傷治癒過程における細胞増殖を抑制することが術後の再狭窄予防の鍵となると考えられて...

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Published in喉頭 Vol. 27; no. 2; pp. 51 - 58
Main Authors 溝上, 大輔, 荒木, 幸仁, 塩谷, 彰浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本喉頭科学会 2015
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Summary:「はじめに」気管狭窄は長期気管挿管, 炎症性疾患, 気管外傷, 熱傷などにより気管粘膜が損傷され, その創傷治癒反応で気管という限られたスペースに過剰な組織の増殖が起こることに起因する. 治療には内視鏡下レーザー切除, バルーン拡張術, 喉頭気管形成術など様々な外科的治療が試みられているが, 複数回の手術や長期の気管切開を要することが多く, 再発率も高いことが問題であった. なぜなら外科的治療自体が粘膜への侵襲であるので, 過剰な創傷反応という悪循環を生みやすいからである. 従って, 傷害を受けた気管粘膜における創傷治癒過程における細胞増殖を抑制することが術後の再狭窄予防の鍵となると考えられており現在, 術後補助療法としてグルココルチコイド, マイトマイシンCの局所投与, トラニラスト全身投与などが試みられているが, 効果は満足できるものではなく, 新たな治療法が望まれている. 気管粘膜の創傷治癒を最小限の副作用でコントロールするには, 全身投与よりも局所投与が望ましいが, 気管粘膜は反復局所投与が解剖学的に難しく, これまでドラッグデリバリーの難しい場所であった.
ISSN:0915-6127
2185-4696
DOI:10.5426/larynx.27.51