W5-1  B細胞カルシウム流入の生理的意義

B細胞におけるCa2+シグナルは,様々な生理的応答に重要な役割を果たすと考えられている.細胞内Ca2+濃度の上昇は主に二つの経路から供給され,一つは細胞内Ca2+ストアである小胞体からのCa2+放出,もう一つは細胞膜上のチャネルを介した細胞外からのCa2+流入である.細胞外からのCa2+流入は小胞体内腔のCa2+濃度の減少が引き金となって引き起こされるCa2+流入,つまり,ストア作動性カルシウム流入(Store-operated calcium entry: SOCE)が主要経路となり,長時間の持続的シグナルを維持する上で重要である.近年,SOCE活性化に必須の分子である小胞体Ca2+センサー...

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Published in日本臨床免疫学会会誌 Vol. 35; no. 4; p. 308a
Main Authors 馬場, 義裕, 松本, 真典, 黒崎, 知博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床免疫学会 2012
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Summary:B細胞におけるCa2+シグナルは,様々な生理的応答に重要な役割を果たすと考えられている.細胞内Ca2+濃度の上昇は主に二つの経路から供給され,一つは細胞内Ca2+ストアである小胞体からのCa2+放出,もう一つは細胞膜上のチャネルを介した細胞外からのCa2+流入である.細胞外からのCa2+流入は小胞体内腔のCa2+濃度の減少が引き金となって引き起こされるCa2+流入,つまり,ストア作動性カルシウム流入(Store-operated calcium entry: SOCE)が主要経路となり,長時間の持続的シグナルを維持する上で重要である.近年,SOCE活性化に必須の分子である小胞体Ca2+センサーSTIM1およびSTIM2が同定されたことにより,SOCE誘導メカニズムの詳細が明らかになりつつあるが,B細胞におけるSOCEの生理的役割は不明であった.我々は,B細胞特異的STIM1/2欠損マウスを用いて,STIM分子がB細胞レセプター刺激依存的なSOCEに必須であることを見出した.STIM欠損により,B細胞分化や抗体産生には異常がなかったが,NFATの活性化不全と,それに起因する抗炎症性サイトカインIL-10の産生障害が認められた.その結果,B細胞特異的STIM欠損マウスでは,多発性硬化症のマウスモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎の著しい増悪化を示した.これらの結果から,B細胞におけるSTIM依存的SOCEがIL-10を介した制御機能に必須であり,自己免疫性炎症反応の抑制に重要な役割を果たすと考えられた.
ISSN:0911-4300
1349-7413
DOI:10.2177/jsci.35.308a