「帝王切開の新しい麻酔法:いかに導入するか」によせて

わが国の年間出生数は約100万人であり, 帝王切開率を20%とすると年間約20万件の帝王切開が行われている. しかし, 産科麻酔の普及の遅れから, 欧米諸国だけでなくアジアの近隣諸国との比較においても旧態依然とした麻酔管理が行われている例が多いと感じる. 帝王切開の大多数は区域麻酔下に行われるため, 新たな管理方法や技術は麻酔の安全性だけでなく, 母体の術中・術後の快適性を高める点でも重要である. 今回のシンポジウムは, わが国では導入が遅れている帝王切開の新たな麻酔管理法の普及を図るため, 今後どのように取り組んでいけばいいのかを考える機会として企画された. シンポジウムでは, 信州大学の田...

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Published in日本臨床麻酔学会誌 Vol. 33; no. 3; p. 362
Main Authors 上山, 博史, 角倉, 弘行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床麻酔学会 2013
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ISSN0285-4945
1349-9149
DOI10.2199/jjsca.33.362

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Summary:わが国の年間出生数は約100万人であり, 帝王切開率を20%とすると年間約20万件の帝王切開が行われている. しかし, 産科麻酔の普及の遅れから, 欧米諸国だけでなくアジアの近隣諸国との比較においても旧態依然とした麻酔管理が行われている例が多いと感じる. 帝王切開の大多数は区域麻酔下に行われるため, 新たな管理方法や技術は麻酔の安全性だけでなく, 母体の術中・術後の快適性を高める点でも重要である. 今回のシンポジウムは, わが国では導入が遅れている帝王切開の新たな麻酔管理法の普及を図るため, 今後どのように取り組んでいけばいいのかを考える機会として企画された. シンポジウムでは, 信州大学の田中秀典先生から“帝王切開術麻酔の現況に関する全国アンケート調査”の結果報告が行われた. そして, 各演者より, (1)くも膜下モルヒネ, (2)腹横筋膜面ブロック(TAPブロック), (3)区域麻酔後の血圧低下防止方法としての輸液, (4)母体への酸素投与, (5)ペンシルポイント針についての講演が行われ, これらの新技術の問題点, 教育, 啓蒙について討論を行った. この中では新しい技術の導入には明らかなメリットがあっても副作用や合併症の懸念から, 試験的な導入にとどまる可能性も報告された. 本特集では“くも膜下モルヒネ”(田辺瀬良美先生)と“区域麻酔後の血圧低下防止方法としての輸液”(松田祐典先生)について寄稿していただいた. また, 本号には「帝王切開術麻酔の現況に関する全国アンケート調査の結果報告」も原著として掲載されている. この中で, 本シンポジウムで取り上げた新たな管理方法だけでなく, 現在, わが国で帝王切開術の麻酔管理がどのように行われているかが詳細に調査されており, 非常に興味深い結果が得られている. 今後, 安全で快適な帝王切開術の麻酔管理の普及を促すためにも, 麻酔科医による管理の向上は必須である. 本特集がこれらの新しい技術の導入の一助となることを期待したい.
ISSN:0285-4945
1349-9149
DOI:10.2199/jjsca.33.362