妊娠29週に母体に乳酸アシドーシスを発症したMELAS合併妊娠の一例

ミトコンドリア病はミトコンドリア機能が障害され,多様な臨床症状を呈する病態の総称である.本症例は母体合併症にミトコンドリア病があり,MELASが強く疑われていた.妊娠23週に切迫早産に対し硫酸マグネシウムの投与を開始,妊娠29週に周期的有痛性子宮収縮を認め,ベタメタゾン,リトドリン塩酸塩を投与後,腹痛増悪し最下点80bpmの遷延徐脈を認め,緊急帝王切開術を実施した.体重1,452gの女児をAp3/6点,臍帯動脈血pH6.873で娩出した.胎児機能不全の原因となりうる術中所見を認めず,術後の母体の血液検査で乳酸高値,高血糖とアシドーシスを認めた.母体はのちにMELASと診断され,MELASを背景...

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Published in日本周産期・新生児医学会雑誌 Vol. 59; no. 3; pp. 410 - 415
Main Authors 北村, 幸子, 中村, 彩加, 星本, 泰文, 藤田, 浩平, 多賀, 敦子, 多賀, 悠希子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本周産期・新生児医学会 2023
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ISSN1348-964X
2435-4996
DOI10.34456/jjspnm.59.3_410

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Summary:ミトコンドリア病はミトコンドリア機能が障害され,多様な臨床症状を呈する病態の総称である.本症例は母体合併症にミトコンドリア病があり,MELASが強く疑われていた.妊娠23週に切迫早産に対し硫酸マグネシウムの投与を開始,妊娠29週に周期的有痛性子宮収縮を認め,ベタメタゾン,リトドリン塩酸塩を投与後,腹痛増悪し最下点80bpmの遷延徐脈を認め,緊急帝王切開術を実施した.体重1,452gの女児をAp3/6点,臍帯動脈血pH6.873で娩出した.胎児機能不全の原因となりうる術中所見を認めず,術後の母体の血液検査で乳酸高値,高血糖とアシドーシスを認めた.母体はのちにMELASと診断され,MELASを背景に乳酸アシドーシスに糖尿病ケトアシドーシスを併発した可能性が考えられた.MELAS合併妊娠において,突然のアシドーシス発症を考慮した上で診療にあたるべきである.
ISSN:1348-964X
2435-4996
DOI:10.34456/jjspnm.59.3_410