8.細菌構成分子と自己免疫性膵炎

自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)type 1の病態に自然免疫と獲得免疫の両者が関与する知見が積み重ねられている.AIPは免疫系感受性遺伝子を背景として何らかの環境因子の関与により発症すると考えられているが,成因の詳細は不明である.環境因子に着目すると,微生物,特に常在細菌が慢性持続的な免疫刺激を担うことによってAIPの成因に関係する可能性が示唆された.そのメカニズムとしては,細菌のパターン認識受容体による自然免疫の活性化,細菌が誘導する炎症性サイトカインによる自己応答性T細胞の活性化,細菌による組織傷害に伴う自己抗原の放出および自己抗原と細菌構成分子との...

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Published in膵臓 Vol. 33; no. 4; pp. 758 - 767
Main Authors 柳澤, 直子, 八木, 淳二, 徳重, 克年, 阿部, 義廣, 樋口, 智昭, 春田, 郁子, 清水, 京子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 25.08.2018
Subjects
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ISSN0913-0071
1881-2805
DOI10.2958/suizo.33.758

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Summary:自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)type 1の病態に自然免疫と獲得免疫の両者が関与する知見が積み重ねられている.AIPは免疫系感受性遺伝子を背景として何らかの環境因子の関与により発症すると考えられているが,成因の詳細は不明である.環境因子に着目すると,微生物,特に常在細菌が慢性持続的な免疫刺激を担うことによってAIPの成因に関係する可能性が示唆された.そのメカニズムとしては,細菌のパターン認識受容体による自然免疫の活性化,細菌が誘導する炎症性サイトカインによる自己応答性T細胞の活性化,細菌による組織傷害に伴う自己抗原の放出および自己抗原と細菌構成分子との分子擬態などが想定されている.AIPの病態と細菌構成分子の関連性については今後のさらなる研究が必要であるが,細菌学的なAIP診断法あるいは治療法の可能性が期待される.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.33.758