ステロイド投与により下垂体茎腫大が著明に改善したリンパ球性漏斗下垂体神経葉炎の一症例

症例は33歳女性。7ヶ月前から口渇,多飲,多尿を生じ精査のため入院。多尿(5,000~8,000ml/日)と低張尿(浸透圧 113mOsm/L)を認め,血漿浸透圧は296mOsm/Lと軽度の高値を示した。尿浸透圧は飲水制限試験で上昇を認めず,ピトレッシン投与で上昇。血漿ADHは5%高張食塩水負荷試験で上昇を認めなかった。一方,下垂体前葉機能は正常に保たれていた。頭部MRIでは均一に造影される下垂体茎の著明な腫大と,T1強調像における下垂体後葉の高信号の消失を認めた。以上よりリンパ球性漏斗下垂体神経葉炎(lymphocytic infundibuloneurohypophysitis; LIN)...

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Published inJOURNAL OF THE KYORIN MEDICAL SOCIETY Vol. 39; no. 1+2; pp. 41 - 47
Main Authors 滝沢, 誠, 板垣, 英二, 小澤, 幸彦, 関, 博之, 田中, 利明, 勝田, 秀紀, 山口, 真哉, 片平, 宏, 下山, 達宏, 丸山, 雅弘, 牛川, 憲司, 吉元, 勝彦, 石田, 均
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 杏林医学会 2008
The Kyorin Medical Society
Subjects
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ISSN0368-5829
1349-886X
DOI10.11434/kyorinmed.39.41

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Summary:症例は33歳女性。7ヶ月前から口渇,多飲,多尿を生じ精査のため入院。多尿(5,000~8,000ml/日)と低張尿(浸透圧 113mOsm/L)を認め,血漿浸透圧は296mOsm/Lと軽度の高値を示した。尿浸透圧は飲水制限試験で上昇を認めず,ピトレッシン投与で上昇。血漿ADHは5%高張食塩水負荷試験で上昇を認めなかった。一方,下垂体前葉機能は正常に保たれていた。頭部MRIでは均一に造影される下垂体茎の著明な腫大と,T1強調像における下垂体後葉の高信号の消失を認めた。以上よりリンパ球性漏斗下垂体神経葉炎(lymphocytic infundibuloneurohypophysitis; LIN)による中枢性尿崩症と診断し,デスモプレシン(DDAVP)10μg/日の点鼻投与を開始し,尿量は1,500~2,000ml/日と減少し自覚症状も消失した。引続き,下垂体茎の炎症を抑制する目的でプレドニソロン20mg/日の投与を開始したところ,約1か月後のMRI画像において下垂体茎の腫大は著明に改善していた。しかし,尿崩症の改善は認められず6年後の現在もDDAVPの投与を継続している。ステロイド治療が行われたLINの報告例に関する検討では,症状出現からステロイド投与までの期間が1ヶ月以内のものでは尿崩症の寛解例を,5ヶ月以内のものでは改善例を認めたが,それ以降に投与を開始したものでは改善を認めなかった。以上より,LIN対してステロイド治療を行う場合にはできるだけ早期に開始することが尿崩症の改善に重要である可能性が示唆された。
ISSN:0368-5829
1349-886X
DOI:10.11434/kyorinmed.39.41