栄養条件による老化過程の修飾と高齢期の栄養所要量
生物の寿命はそれぞれ遺伝学的に規定されており, ラットやマウスの寿命がヒトのそれを上回ることはない. しかしその生物学的寿命も, 個体を取り巻く外的環境要因に修飾され, 個体がその生物学的寿命をまっとうすることはきわめてまれである. 外的環境要因の中でも栄養学的要因は, 個体の生理的老化過程を修飾し, 疾病の発症を介して個体の機能低下と生存に脅威をもたらす. 老化と栄養に関する研究は, その視点により二つに分けられる. その一つは, 出生から死に至る生理的老化過程を修飾する外的環境要因の一つとしての食生活 栄養の影響を, おもに実験動物を用いた縦断的研究で明らかにするものである. もう一つは,...
Saved in:
Published in | 日本栄養・食糧学会誌 Vol. 47; no. 6; pp. 423 - 429 |
---|---|
Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
1994
日本栄養・食糧学会 |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0287-3516 1883-2849 |
DOI | 10.4327/jsnfs.47.423 |
Cover
Summary: | 生物の寿命はそれぞれ遺伝学的に規定されており, ラットやマウスの寿命がヒトのそれを上回ることはない. しかしその生物学的寿命も, 個体を取り巻く外的環境要因に修飾され, 個体がその生物学的寿命をまっとうすることはきわめてまれである. 外的環境要因の中でも栄養学的要因は, 個体の生理的老化過程を修飾し, 疾病の発症を介して個体の機能低下と生存に脅威をもたらす. 老化と栄養に関する研究は, その視点により二つに分けられる. その一つは, 出生から死に至る生理的老化過程を修飾する外的環境要因の一つとしての食生活 栄養の影響を, おもに実験動物を用いた縦断的研究で明らかにするものである. もう一つは, すでに高齢期に達し身体的, 社会的にさまざまなハンディキャップを抱えた高齢者を対象とし, 個体の抱える健康上のさまざまな問題を食生活 栄養の面から対応するための研究である. 本総説では, おもに前者に焦点をおき, 後者についても若干触れてみたい. 1. 食餌制限の生存日数延長効果 加齢に伴う生体の形態的変化や生理的機能低下, また慢性疾病の発症が, 個体の食事 栄養条件の適否と密接に関係していることは, 1930年代以降, ラットやマウスを用いた縦断的研究で指摘されてきた. |
---|---|
ISSN: | 0287-3516 1883-2849 |
DOI: | 10.4327/jsnfs.47.423 |