膵石を合併した巨大穿通性胃潰瘍の1例

われわれは, 心窩部痛を訴えて来院し, 検査の結果巨大穿通性胃潰瘍と診断され, その穿通部の膵に石灰化が認められた1例を経験した. 膵に石灰化を認めるとき, 膵管内に結石が生じる場合と膵実質内に石灰が沈着する場合とがあり, この両者をあわせて膵石症と呼んでいる. 膵石症は一般に慢性膵炎の晩期像と考えられている. その原因としてアルコール摂取との因果関係が主として論じられている. 本例は, 穿通部の膵が腫大, 硬化し, 針生検の組織学的所見で膵組織の荒廃と瘢痕化を認めたことから, 潰瘍穿通のため膵の周囲から膵実質内に炎症が波及し, その瘢痕化した部位に石灰が沈着したものと考えられた. このような...

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Published in医療 Vol. 32; no. 6; pp. 774 - 777
Main Authors 木村, みち子, 大木, 野洋, 二宮, 光子, 斉藤, 昭三, 伊藤, 一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 1978
医療同好会
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ISSN0021-1699
1884-8729
DOI10.11261/iryo1946.32.774

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Summary:われわれは, 心窩部痛を訴えて来院し, 検査の結果巨大穿通性胃潰瘍と診断され, その穿通部の膵に石灰化が認められた1例を経験した. 膵に石灰化を認めるとき, 膵管内に結石が生じる場合と膵実質内に石灰が沈着する場合とがあり, この両者をあわせて膵石症と呼んでいる. 膵石症は一般に慢性膵炎の晩期像と考えられている. その原因としてアルコール摂取との因果関係が主として論じられている. 本例は, 穿通部の膵が腫大, 硬化し, 針生検の組織学的所見で膵組織の荒廃と瘢痕化を認めたことから, 潰瘍穿通のため膵の周囲から膵実質内に炎症が波及し, その瘢痕化した部位に石灰が沈着したものと考えられた. このような機序で膵に石灰化を起すことはまれであるが, 膵石症に胃潰瘍の合併をみることがときにあり, 一つの示唆を与えるものとして報告した.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.32.774