術後血清肝炎

手術侵襲の拡大とともに, 輸血の機会はきわめて増加し, 供血源は新鮮血輸血から輸血クラブを経て血銀による保存血輸血へと発展した. しかしながら無批判的に行なわれた保存血輸血は, その後術後血清肝炎の発生をみるにおよんで問題となり, 今やその予防, 治療は医学会の大きな関心事となっている.1)~26) われわれは本問題に関心をはらいながらも, 重症例が過半数をしめ輸血を余儀なくされる場合が多く, 相当数血清肝炎の発生をみた. われわれは昭和38年6月以降, 昭和40年5月までの過去2年間に, 黄疸を伴ったいわゆる術後血清肝炎患者の調査を行ない, 興味ある知見が得られたので報告する. 「われわれの...

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Published in医療 Vol. 21; no. 4; pp. 440 - 446
Main Authors 柴崎, 信悟, 渡辺, 至, 渡辺, 晃, 西連寺, 正弘, 村上, 穆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 1967
医療同好会
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ISSN0021-1699
1884-8729
DOI10.11261/iryo1946.21.440

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Summary:手術侵襲の拡大とともに, 輸血の機会はきわめて増加し, 供血源は新鮮血輸血から輸血クラブを経て血銀による保存血輸血へと発展した. しかしながら無批判的に行なわれた保存血輸血は, その後術後血清肝炎の発生をみるにおよんで問題となり, 今やその予防, 治療は医学会の大きな関心事となっている.1)~26) われわれは本問題に関心をはらいながらも, 重症例が過半数をしめ輸血を余儀なくされる場合が多く, 相当数血清肝炎の発生をみた. われわれは昭和38年6月以降, 昭和40年5月までの過去2年間に, 黄疸を伴ったいわゆる術後血清肝炎患者の調査を行ない, 興味ある知見が得られたので報告する. 「われわれの取扱った症例について」昭和38年6月1日から昭和40年5月31日まで満2ヵ年間に当院外科で取扱った総手術件数は995例で, そのうち新鮮血輸血, 保存血輸血を行なった症例は378例で, 手術件数の38%に輸血を行なったことになる. 新鮮血輸血を施行した症例は34例で, 疾患別にみると胃腸疾患25例(胃潰瘍8, 胃癌3, 胃内異物1, 胃炎1, 十二指腸狭窄1, 腸閉塞4, 腸ポリポージス1, 腸癒着1, 腸瘻1, 横行結腸過長症1, S字状結腸過長症1, 汎発性腹膜炎1, 直腸脱1), 胆道系疾患2例(胆石症1, 先天性胆道狭窄1), 脈管系疾患3例(下肢動脈栓塞症1, 橈骨動脈瘤1, 血管腫1), その他4例(ゴーシェー氏病1, 前立腺肥大症1, 頸部神経芽細胞腫1, 骨膜炎1)でこれらの症例中, 下肢動脈栓塞症例は術後脳栓塞を合併し死亡しているが, 血清肝炎の発生は皆無であった.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.21.440