糖尿病性腎症に対する血液透析療法中に非アルコール性ウェルニッケ脳症を呈した1例

症例は,慢性腎不全で3年間血液透析をうけている75歳男性である.アルコール多飲はない.ビタミンをふくまない糖質液の点滴後,急速な歩行障害と意識障害を呈した.脳MRIや脳脊髄液に異常が無かったものの,病歴と症候からウェルニッケ脳症がうたがわれたため,直ちにビタミンB1(VB1)の投与を開始し,症候はすみやかに改善した.後に血中VB1の著明な低値が判明し,ウェルニッケ脳症の診断が確定した.血液透析患者や高齢者では,画像所見が正常であっても非アルコール性ウェルニッケ脳症の可能性があることを十分に認識し,些かでも本症がうたがわれた際は,VB1の検査結果を待つことなくすみやかにVB1投与を開始すべきであ...

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Published in臨床神経学 Vol. 50; no. 6; pp. 409 - 411
Main Authors 榎本, 雪, 守谷, 新, 菊地, サエ子, 望月, 仁志, 杉浦, 嘉泰, 宇川, 義一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本神経学会 2010
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Summary:症例は,慢性腎不全で3年間血液透析をうけている75歳男性である.アルコール多飲はない.ビタミンをふくまない糖質液の点滴後,急速な歩行障害と意識障害を呈した.脳MRIや脳脊髄液に異常が無かったものの,病歴と症候からウェルニッケ脳症がうたがわれたため,直ちにビタミンB1(VB1)の投与を開始し,症候はすみやかに改善した.後に血中VB1の著明な低値が判明し,ウェルニッケ脳症の診断が確定した.血液透析患者や高齢者では,画像所見が正常であっても非アルコール性ウェルニッケ脳症の可能性があることを十分に認識し,些かでも本症がうたがわれた際は,VB1の検査結果を待つことなくすみやかにVB1投与を開始すべきである.
ISSN:0009-918X
1882-0654
DOI:10.5692/clinicalneurol.50.409