中毒性肝障害

27国立病院で158例の中毒性肝障害の臨床病理を調査した. 毒物による6例以外の, 薬剤性肝障害の原因薬剤は抗生物質, サルフア剤, 抗結核薬, 関節痛薬, 精神用薬, ステロイド剤, 循環器用薬など多方面にわたつているが, その多くは文献上にみられるものである. 65例41.1%が病理組織学的に検討された. 重症剖検例で中毒が激烈な場合には, 肝は浮腫状に腫脹し構造が乱れないうちに死亡する. 数日間経過する場合には, まず肝細胞壊死が起こり, やがて嗜銀線維が乱れて所々消失する. 数ヵ月以上経過する場合には, 肝は萎縮し, 壊死後性肝硬変の像をみるようになる. また, 急性肝障害回復例の肝生...

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Published in医療 Vol. 29; no. 2; pp. 155 - 165
Main Author 佐野, 一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 1975
医療同好会
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Summary:27国立病院で158例の中毒性肝障害の臨床病理を調査した. 毒物による6例以外の, 薬剤性肝障害の原因薬剤は抗生物質, サルフア剤, 抗結核薬, 関節痛薬, 精神用薬, ステロイド剤, 循環器用薬など多方面にわたつているが, その多くは文献上にみられるものである. 65例41.1%が病理組織学的に検討された. 重症剖検例で中毒が激烈な場合には, 肝は浮腫状に腫脹し構造が乱れないうちに死亡する. 数日間経過する場合には, まず肝細胞壊死が起こり, やがて嗜銀線維が乱れて所々消失する. 数ヵ月以上経過する場合には, 肝は萎縮し, 壊死後性肝硬変の像をみるようになる. また, 急性肝障害回復例の肝生検では潜在性肝障害あるいは慢性肝障害の基盤に発生したと思われる所見をみる場合がかなり多い. 要するに肝疾患ではもちろん, 潜在性肝障害の存在が疑われる場合には, 薬剤性副作用が起こりやすいことを念頭におく必要があることを痛感する.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.29.155