宇宙医学からの帰還~宇宙医学と温泉医学
最初に, 宇宙航空研究開発機構(有人宇宙技術部)の立花氏から, 宇宙での長期滞在や日本人飛行士の活躍に伴い, 健康管理がNASAから日本のバイオ・メデカル・エンジニアのセクションに移ってきた経緯を踏まえ, 宇宙ステーションにおける3~6ヶ月にわたる長期滞在中の健康管理の体系が詳細に報告された. 特に日本側が独立的に健康管理が実施できた精神心理的支援, 放射線被曝管理, フライトサージャン(FS)での経験は, 我が国のこの分野の進展に大きな礎になるとのことであった. 同じ機構の宇宙医学生物学研究室の水野氏は宇宙での一日8時間週5日の労働を維持するための運動・栄養・休養面からの取り組を紹介した....
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Published in | 日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 74; no. 1; p. 23 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
2010
日本温泉気候物理医学会 |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0029-0343 1884-3697 |
DOI | 10.11390/onki.74.23 |
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Summary: | 最初に, 宇宙航空研究開発機構(有人宇宙技術部)の立花氏から, 宇宙での長期滞在や日本人飛行士の活躍に伴い, 健康管理がNASAから日本のバイオ・メデカル・エンジニアのセクションに移ってきた経緯を踏まえ, 宇宙ステーションにおける3~6ヶ月にわたる長期滞在中の健康管理の体系が詳細に報告された. 特に日本側が独立的に健康管理が実施できた精神心理的支援, 放射線被曝管理, フライトサージャン(FS)での経験は, 我が国のこの分野の進展に大きな礎になるとのことであった. 同じ機構の宇宙医学生物学研究室の水野氏は宇宙での一日8時間週5日の労働を維持するための運動・栄養・休養面からの取り組を紹介した. 特に運動に関しては, 宇宙滞在時の微小重力に起因する筋萎縮・骨萎縮の急速な進行, 血液量低下に伴う心・循環系機能の低下などを防ぐために, 抵抗運動, 歩行・走行, ペダリング運動などが1日あたり2.5時間を使って行われるという. また, 食生活では日本食のメニューの充実が進んだとのことであった. 以前NASAで航空宇宙医学の調査研究に従事していた経験を持ち, 現在も東邦大学で航空宇宙医学の非常勤講師を務める三井メデイカルセンターの三井氏が, NASAエイムス研究所で実施した循環系・神経系の研究にもとづき, 宇宙医学と温泉医学に共通する循環動態について, (1)微小重力による体液移動と水圧による体液移動の類似性, (2)頭側への体液シフトが脳循環及び頭蓋内圧に及ぼす影響, (3)宇宙飛行による起立耐性変化と入浴時の起立耐性問題などの点から, 両者の類似性とそれを踏まえての今後の展望を報告した. 宇宙医学と温泉気候物理医学の分野には, 共通する事項の多いことをあらためて認識した意義深いシンポジウムであった. |
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ISSN: | 0029-0343 1884-3697 |
DOI: | 10.11390/onki.74.23 |