米国における透析前腎不全医療の現状

慢性透析患者の病状や死亡に大きな影響を及ぼす因子として, 透析導入前の医療の質と透析導入の時期が注目されている。血清クレアチニン値が男性で2.0mg/dl, 女性で1.5mg/dlに達すると, 末期腎疾患 (ESRD) (慢性腎不全) の前期, すなわち前末期腎疾患期 (前ESRD期) に入ったとみなされる。米国では, 腎疾患に関する早期検査が普及しているわけではなく, そのため, 腎機能不全の発見がかなり遅れることがあり, 蛋白尿や血清クレアチニンの増加があっても, 腎疾患が記録されていないことが多い。また, 糖尿病患者でアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬が使用されていない, 高血...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 48; no. 5; pp. 720 - 725
Main Authors 戸村, 成男, 平野, 千秋, 椎貝, 達夫, 柳, 久子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 01.01.2000
日本農村医学会
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ISSN0468-2513
1349-7421
DOI10.2185/jjrm.48.720

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Summary:慢性透析患者の病状や死亡に大きな影響を及ぼす因子として, 透析導入前の医療の質と透析導入の時期が注目されている。血清クレアチニン値が男性で2.0mg/dl, 女性で1.5mg/dlに達すると, 末期腎疾患 (ESRD) (慢性腎不全) の前期, すなわち前末期腎疾患期 (前ESRD期) に入ったとみなされる。米国では, 腎疾患に関する早期検査が普及しているわけではなく, そのため, 腎機能不全の発見がかなり遅れることがあり, 蛋白尿や血清クレアチニンの増加があっても, 腎疾患が記録されていないことが多い。また, 糖尿病患者でアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬が使用されていない, 高血圧患者で血圧コントロールが不適正であるなど慢性腎不全の進行を遅らせるための早期の介入の不足, 患者の全般的健康状態の低下, 低アルブミン血症, 高度の貧血, 恒久的血管アクセス作製の遅れ, そしてなかには透析療法の選択に関する教育をなんら受けずに透析に導入される患者がいるなど, 米国の前ESRD期の医療は多くの課題をかかえている。
ISSN:0468-2513
1349-7421
DOI:10.2185/jjrm.48.720