慢性腎疾患の治療における低たんぱく食の位置づけ

慢性腎疾患 (CKD) の進行抑制に低たんぱく食 (LPD) は不要という説がある。しかしCKDのうちの非糖尿病性腎症 (NDN) を対象としたLPDのランダム化比較試, 験 (RCT) についてのメタアナリシス (MA) 3篇では, いずれのMAでもLPDは「進行抑制に有用」と結論されている。他領域でも行われているような, RCT一つ一つの質を評価し, 質の高いものだけのMAを行えば, LPDの有用性はさらに高まると思われる。 一歩退いて進行抑制にLPDが無効の場合を考えてみよう。WHO/FAOが疾病予防の観点から30年前に発表した一般人の食事についての勧告では, 推奨される1日たんぱく摂取...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 51; no. 6; pp. 928 - 932
Main Authors 椎貝, 達夫, 前田, 益孝, 小林, 隆彦, 棚瀬, 健仁, 小林, 君枝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2003
日本農村医学会
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Summary:慢性腎疾患 (CKD) の進行抑制に低たんぱく食 (LPD) は不要という説がある。しかしCKDのうちの非糖尿病性腎症 (NDN) を対象としたLPDのランダム化比較試, 験 (RCT) についてのメタアナリシス (MA) 3篇では, いずれのMAでもLPDは「進行抑制に有用」と結論されている。他領域でも行われているような, RCT一つ一つの質を評価し, 質の高いものだけのMAを行えば, LPDの有用性はさらに高まると思われる。 一歩退いて進行抑制にLPDが無効の場合を考えてみよう。WHO/FAOが疾病予防の観点から30年前に発表した一般人の食事についての勧告では, 推奨される1日たんぱく摂取量 (DPI) はたんぱく0.8g/kg/dayであった。しかし先進国では国民のDPIはどの国でも1.1~1.3g/kg/dayである。CKDに対し食生活に何の規制も加えなければ, この一般人のたんぱく摂取量になってしまうだろう。 一般人より心血管系リスクがはるかに高いNDN・CKD例がたんぱく制限で良いとは到底考えられない。つまりどのような立場であってもDPIのモニタリングをキチンと行い, DPIO.89/kg/day, あるいはDPI0.6g/kg/dayになるような指導を行い, その条件下に降圧療法, レニン・アンジオテンシン系抑制, アシドーシス補正, 腎性貧血の治療などの総合的な進行抑制療法を行うべきだろう。
ISSN:0468-2513
1349-7421
DOI:10.2185/jjrm.51.928