高齢者肝細胞癌症例における化学塞栓療法の成績

高齢者の肝細胞癌 (HCC) 症例に対する化学塞栓療法 (TACE) 反復施行例の成績について, 若年者症例を対照として検討した。2回以上のTACEを主たる治療として行ったHCC症例のうち, 初回治療時の年齢が70歳以上の28例を高齢者群 (O群), 55歳以下の23例を若年者群 (Y群) とした。TACEはlipidol TAI (またはlipiodol TAE) を3か月に1回行うことを原則とし, 各群全症例におけるのべ施行回数はO群で157回, Y群で186回だった。両群で性, Child分類, performance status, 病因, 飲酒歴, 肝硬変の合併, 主腫瘍径, Sta...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 47; no. 5; pp. 725 - 729
Main Authors 余, 心漢, 田沢, 潤一, 平沼, 進, 道下, 宣成, 佐藤, 千史, 真田, 勝弘, 柿沼, 晴, 酒井, 義法, 前田, 学, 宮坂, 有香, 永山, 和宜
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 01.01.1999
日本農村医学会
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ISSN0468-2513
1349-7421
DOI10.2185/jjrm.47.725

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Summary:高齢者の肝細胞癌 (HCC) 症例に対する化学塞栓療法 (TACE) 反復施行例の成績について, 若年者症例を対照として検討した。2回以上のTACEを主たる治療として行ったHCC症例のうち, 初回治療時の年齢が70歳以上の28例を高齢者群 (O群), 55歳以下の23例を若年者群 (Y群) とした。TACEはlipidol TAI (またはlipiodol TAE) を3か月に1回行うことを原則とし, 各群全症例におけるのべ施行回数はO群で157回, Y群で186回だった。両群で性, Child分類, performance status, 病因, 飲酒歴, 肝硬変の合併, 主腫瘍径, Stageに差はみられなかった。TACEの施行回数は, O群5.6±4.2, Y群8.1±7.0で差がなかった。O群とY群において抗癌剤の種類および1回あたりの動注量には差がなかった。PR以上の効果が1回以上得られた症例は, O群で28例中10例で, Y群で23例中13例だった (NS)。O群ではのべ6回重篤な副作用 (骨髄抑制2, 十二指腸潰瘍1, 胸水1, 脳症1, 敗血症1) がみられたのに対し, Y群ではみられなかった (P<0.01)。1, 2, 3, 5年の各生存率 (%) はO群では74, 52, 27, 14, Y群では65, 50, 46, 36でY群で有意に高かった (P<0.01, Mantel-Cox法) が, 2年までの生存率は同等だった。肝疾患関連の死因は肝不全, 癌死, 静脈瘤破裂の順に, O群で10例, 6例, 5例, Y群で9例, 4例, 1例だった (NS)。TACEは高齢者HCC症例において, 骨髄抑制などの副作用が多いが, 若年者と同様に反復施行でき同等の抗腫瘍効果がえられた。副作用に留意しながら行えば, 主たる治療法として有用であると考えられた。
ISSN:0468-2513
1349-7421
DOI:10.2185/jjrm.47.725