遺伝性乳がん・卵巣がん症候群における遺伝カウンセリング受診の障壁に関する多施設調査

【背景・目的】遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の原因遺伝子に病的変異を有する女性は,通常の乳がんとは異なる医学的管理が推奨されるため,適切に遺伝医療を受診することが望まれる。しかし,日本では遺伝カウンセリング(以下,GC)受診率が低いことが危惧されており,本研究では日本の乳がん患者におけるGC受診の阻害要因を明らかにすることを目的とした。【方法】欧米の先行研究から受診行動に関連する要因を抽出して質問紙を作成し調査を実施した。対象は,遺伝性乳がんに関するGCを受診したことのない女性乳がん患者(GC未受診者)およびGCを受診したことのある遺伝性乳がんハイリスク女性(GC受診者)とした。【結...

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Published in医療と社会 Vol. 27; no. 2; pp. 261 - 275
Main Authors 甲畑(照井), 宏子, 四元, 淳子, 青木, 美保, 大石, 陽子, 内田, 信之, 赤木, 究, 吉田, 雅幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 医療科学研究所 2017
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Summary:【背景・目的】遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の原因遺伝子に病的変異を有する女性は,通常の乳がんとは異なる医学的管理が推奨されるため,適切に遺伝医療を受診することが望まれる。しかし,日本では遺伝カウンセリング(以下,GC)受診率が低いことが危惧されており,本研究では日本の乳がん患者におけるGC受診の阻害要因を明らかにすることを目的とした。【方法】欧米の先行研究から受診行動に関連する要因を抽出して質問紙を作成し調査を実施した。対象は,遺伝性乳がんに関するGCを受診したことのない女性乳がん患者(GC未受診者)およびGCを受診したことのある遺伝性乳がんハイリスク女性(GC受診者)とした。【結果】GC未受診者62名およびGC受診者29名から回答を得た。娘の有無や家族歴,世帯年収等の社会的属性とGC受診の態度には関連が示されず,GC未受診者でみられた遺伝性疾患に対する負の感情についてはGC受診者でも同様に確認された。GC受診の態度にはGCのメリットに対する認識(PROS)が正に,環境的・経済的要因(BAR)が負に影響を及ぼしていた。また,GCに関する知識が少ない人ほど,GC受診の優先順位が低く,費用に対する懸念も大きい傾向が示された。【考察】受診の障壁を解消するために,GCのメリットや意義に関する情報提供は最も重要だが,一般的・画一的な情報ではなく個別のニーズを拾い上げるアプローチ法が効果的かもしれない。
ISSN:0916-9202
1883-4477
DOI:10.4091/iken.2017.003