ALT活性阻害を示すIgGの免疫化学的特性

ALT低活性異常を示す稀な例について検討を加えた. 高ALT血清との混合試験によりALT活性阻害因子の存在が確認された. 特異抗血清を用いた免疫混合法により, ALT活性阻害因子はIgG-κ型蛋白であることが判明した. 患者IgGを精製し免疫固定電気泳動を行ったところ, モノクロナールバンドは観察されなかったが, L鎖は明らかにκ鎖優位であった. SDS-PAGEを行ったところ, 患者IgG分子を構成するγ鎖は分子量約55,000, L鎖は約26,000と正常IgGとほぼ同じであり, ドメイン欠損などの分子異常は確認されなかった. また, 基質 (アラニン) および補酵素 (ピリドキサルリン酸...

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Published in生物物理化学 Vol. 50; no. 4; pp. 225 - 229
Main Authors 小川, 登, 石原, 潤, 渡邉, 眞一郎, 荏原, 茂, 亀子, 文子, 大川, 記代, 長澤, 佳美, 藤田, 清貴, 安藤, 敏子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本電気泳動学会 2006
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ISSN0031-9082
1349-9785
DOI10.2198/sbk.50.225

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Summary:ALT低活性異常を示す稀な例について検討を加えた. 高ALT血清との混合試験によりALT活性阻害因子の存在が確認された. 特異抗血清を用いた免疫混合法により, ALT活性阻害因子はIgG-κ型蛋白であることが判明した. 患者IgGを精製し免疫固定電気泳動を行ったところ, モノクロナールバンドは観察されなかったが, L鎖は明らかにκ鎖優位であった. SDS-PAGEを行ったところ, 患者IgG分子を構成するγ鎖は分子量約55,000, L鎖は約26,000と正常IgGとほぼ同じであり, ドメイン欠損などの分子異常は確認されなかった. また, 基質 (アラニン) および補酵素 (ピリドキサルリン酸) の添加実験では, 患者IgGのALT活性阻害に変化を認めなかったことから, 酵素活性部位に患者IgGが直接結合していないか, あるいは基質や補酵素より患者IgGの方が結合部位に対し親和性が高い可能性が考えられた. さらに, 抗γFab抗体により, 活性阻害がブロックされたことから, 患者IgG分子のFab領域がALT活性阻害に強く関与していることが示唆された.
ISSN:0031-9082
1349-9785
DOI:10.2198/sbk.50.225