細胞性免疫によるエイズ克服戦略

エイズのキャリアでは一見動きがあまりないように見えるが, 実際には生体の防御機構によるHIV (ヒト免疫不全ウイルス) の不活化と, HIVによる免疫細胞 (CD4+T-細胞) の破壊が同時に進行する動的平衡状態であることが明らかになってきた。また, 間違いなくHIVに晒されているのに感染しないハイリスク・グループが存在するが, この場合にはHIVに対する細胞性免疫が成立している場合の多いことが知られている。動物実験では, サル免疫不全ウイルスあるいはウシ白血病ウイルスの感染防御に細胞性免疫が関与していることが強く示唆されている。このような一連の事実は, 細胞性免疫を中心とする生体の防御機構が...

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Published in日本細菌学雑誌 Vol. 51; no. 2; pp. 559 - 569
Main Authors 杉本, 正信, 大石, 和恵
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本細菌学会 1996
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Summary:エイズのキャリアでは一見動きがあまりないように見えるが, 実際には生体の防御機構によるHIV (ヒト免疫不全ウイルス) の不活化と, HIVによる免疫細胞 (CD4+T-細胞) の破壊が同時に進行する動的平衡状態であることが明らかになってきた。また, 間違いなくHIVに晒されているのに感染しないハイリスク・グループが存在するが, この場合にはHIVに対する細胞性免疫が成立している場合の多いことが知られている。動物実験では, サル免疫不全ウイルスあるいはウシ白血病ウイルスの感染防御に細胞性免疫が関与していることが強く示唆されている。このような一連の事実は, 細胞性免疫を中心とする生体の防御機構がHIVを始めとするレトロウイルス感染防御で重要な働きをすることを意味する。本総説では上述した事実をレビューするとともに, それに立脚したワクチン戦略およびその問題点を考察した。
ISSN:0021-4930
1882-4110
DOI:10.3412/jsb.51.559