モジュール内溶質移動に及ぼす赤血球の役割

血液浄化療法による患者の治療効果やモジユールの性能を評価する場合、一般に血液サンプリングが施行されている。しかし、得られた血液濃度は血球分離や除蛋白操作を経た後の血漿濃度や血漿水濃度である場合がほとんどである。従つて血液浄化療法によつて血漿濃度が50%減少しても、血球内液では10%しか減少していないこともあり、血漿濃度が誤つた情報を提供する可能性がある。そこで本研究では溶質として尿素、クレアチニンを選び、牛血定常実験により赤血球による影響について調べた。この結果、尿素の赤血球膜透過速度はきわめて速く、クリアランスとしては全血流量QBを用いるべきことがわかつた。一方、クレアチニンはモジユール滞留...

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Published in人工臓器 Vol. 12; no. 2; pp. 676 - 679
Main Authors 峰島, 三千男, 新井, 信之, 岡部, 正明, 神品, 順二, 竹沢, 真吾, 酒井, 清孝, 酒井, 糾
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本人工臓器学会 1983
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Summary:血液浄化療法による患者の治療効果やモジユールの性能を評価する場合、一般に血液サンプリングが施行されている。しかし、得られた血液濃度は血球分離や除蛋白操作を経た後の血漿濃度や血漿水濃度である場合がほとんどである。従つて血液浄化療法によつて血漿濃度が50%減少しても、血球内液では10%しか減少していないこともあり、血漿濃度が誤つた情報を提供する可能性がある。そこで本研究では溶質として尿素、クレアチニンを選び、牛血定常実験により赤血球による影響について調べた。この結果、尿素の赤血球膜透過速度はきわめて速く、クリアランスとしては全血流量QBを用いるべきことがわかつた。一方、クレアチニンはモジユール滞留時間内ではほとんど血球内から流出せず、クリアランスとしては血漿濃度、血漿流量を用いなければならない。クレアチニンに及ぼす赤血球の影響はむしろ治療時間のオーダーで効き、血球とのrebound現象は治療後15時間にも及ぶことがわかつた。
ISSN:0300-0818
1883-6097
DOI:10.11392/jsao1972.12.676