乳幼児急性中耳炎の現状と対応―with ワクチンの現状

急性中耳炎は1990年代半ば頃からその病態に変化が現れ, 抗菌薬治療を行っても鼓膜所見が改善せずに, 抗菌薬を中止するとすぐに「再燃を繰り返す急性中耳炎」(再燃性) や, いったん治っても何度も再発を繰り返す反復性急性中耳炎などの治療困難症例が問題となってきた. このように治療困難な経過をとる急性中耳炎には再燃性と再発 (反復) 性があるが, これらは別の病態である. このうち再発 (反復) 症例ではそれぞれの急性中耳炎のエピソードはいったん治癒するものの, 抗菌薬によって再発を抑えることはできないことから,「抗菌薬治療の限界とも言える真の難治性中耳炎」と捉えられている. このような難治症例に...

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Published in日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 Vol. 124; no. 10; pp. 1355 - 1359
Main Author 伊藤, 真人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 20.10.2021
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
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ISSN2436-5793
2436-5866
DOI10.3950/jibiinkotokeibu.124.10_1355

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Summary:急性中耳炎は1990年代半ば頃からその病態に変化が現れ, 抗菌薬治療を行っても鼓膜所見が改善せずに, 抗菌薬を中止するとすぐに「再燃を繰り返す急性中耳炎」(再燃性) や, いったん治っても何度も再発を繰り返す反復性急性中耳炎などの治療困難症例が問題となってきた. このように治療困難な経過をとる急性中耳炎には再燃性と再発 (反復) 性があるが, これらは別の病態である. このうち再発 (反復) 症例ではそれぞれの急性中耳炎のエピソードはいったん治癒するものの, 抗菌薬によって再発を抑えることはできないことから,「抗菌薬治療の限界とも言える真の難治性中耳炎」と捉えられている. このような難治症例においては, 抗菌薬治療を補助する治療としてワクチン予防に期待がよせられる. 急性中耳炎の主要起炎菌は肺炎球菌とインフルエンザ菌であるが, 急性中耳炎を含む上気道感染症の原因となるインフルエンザ菌はそのほとんどが無莢膜型 (NTHi) であり, 現在使用可能な b 型インフルエンザ菌 (Hib) ワクチンの中耳炎予防効果はない. 肺炎球菌タンパク結合型ワクチン (7価, 13価 PCV ワクチン) は, ワクチン血清型肺炎球菌による急性中耳炎の予防効果があり, 特に反復性中耳炎やその治療としての鼓膜チューブ留置を減少させる効果がある. さらにインフルエンザウイルス・ワクチンは, 先行するウイルス性上気道炎の制御によって, 急性中耳炎予防効果が認められる.
ISSN:2436-5793
2436-5866
DOI:10.3950/jibiinkotokeibu.124.10_1355