場所記憶と回想(<特集>高齢者居住研究部会)

「場所の記憶語りの意味」高齢期には身体機能の低下などの理由によって, 外出機会が減少したり, 居住場所移動を余儀なくされる可能性が高くなると考えられる. 高い高齢化率(20.4%)*1, 65歳以上のいる世帯が全世帯の38.6%を占め, その内のほぼ半数(51.3%)が, 夫婦のみか単身という高齢者のみ世帯という現状*1とあわせると, こうした状況下に置かれる個人の増加は容易に予測することができる. 外出機会の極度な減少や居住場所の移動は住み慣れた地域環境と直接関わり合う機会を減少させることにもつながる. いわば, 物理的直接的な経験の側面で環境の非連続性を体験することになる. しかし直接的な...

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Published in日本生理人類学会誌 Vol. 12; no. 2; pp. 95 - 98
Main Authors 古賀, 紀江, 横山, ゆりか
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生理人類学会 2007
Japan Society of Physiological Anthropology
Subjects
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ISSN1342-3215
2432-0986
DOI10.20718/jjpa.12.2_95

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Summary:「場所の記憶語りの意味」高齢期には身体機能の低下などの理由によって, 外出機会が減少したり, 居住場所移動を余儀なくされる可能性が高くなると考えられる. 高い高齢化率(20.4%)*1, 65歳以上のいる世帯が全世帯の38.6%を占め, その内のほぼ半数(51.3%)が, 夫婦のみか単身という高齢者のみ世帯という現状*1とあわせると, こうした状況下に置かれる個人の増加は容易に予測することができる. 外出機会の極度な減少や居住場所の移動は住み慣れた地域環境と直接関わり合う機会を減少させることにもつながる. いわば, 物理的直接的な経験の側面で環境の非連続性を体験することになる. しかし直接的な関係を持つ機会の減少や喪失があっても, ある種の「記憶」は長くとどまり, その後の生活に影響を及ぼし続けるものである. この意味で「記憶」は高齢期の環境移行において体験する不連続性に対して何らかの効果を有すると考えることができる. 本稿では記憶のうち, 特に個人が人生の中で体験した場所の記憶を取り上げ, 外出機会が減少した状況下にある高齢者自身が記憶する場所の実態や場所の記憶そのものの構造, さらにこれらの記憶を語ることの意味と可能性について実証的に考察する.
ISSN:1342-3215
2432-0986
DOI:10.20718/jjpa.12.2_95