膵頭十二指腸切除術後左側門脈圧亢進症による膵空腸吻合部からの消化管出血に対して残膵全摘および脾臓摘出術を施行した1例

症例は65歳の女性で,膵頭部癌に対する門脈・上腸間膜静脈合併切除・左腎静脈グラフト再建(脾静脈(splenic vein;以下,SVと略記)非再建)を伴う膵頭十二指腸切除1年1か月後に繰り返す血便を発症した.下部消化管内視鏡検査で結腸肝彎曲静脈瘤から出血を認め内視鏡治療で止血を得たが,その後も血便の改善なく,上部消化管内視鏡検査で膵空腸吻合部近傍静脈瘤からの消化管出血を認めた.腹部造影CTで膵癌再発所見を認めず,膵空腸吻合部近傍に静脈瘤を認めた.SV非再建による左側門脈圧亢進を起因とした膵空腸吻合部近傍静脈瘤からの消化管出血と判断した.内視鏡的止血術およびSV圧減圧を目的とした部分的脾動脈塞栓...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 52; no. 12; pp. 712 - 721
Main Authors 蘆田, 良, 皆川, 卓也, 山本, 有祐, 大木, 克久, 杉浦, 禎一, 上坂, 克彦, 岡村, 行泰, 伊藤, 貴明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.12.2019
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2018.0186

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Summary:症例は65歳の女性で,膵頭部癌に対する門脈・上腸間膜静脈合併切除・左腎静脈グラフト再建(脾静脈(splenic vein;以下,SVと略記)非再建)を伴う膵頭十二指腸切除1年1か月後に繰り返す血便を発症した.下部消化管内視鏡検査で結腸肝彎曲静脈瘤から出血を認め内視鏡治療で止血を得たが,その後も血便の改善なく,上部消化管内視鏡検査で膵空腸吻合部近傍静脈瘤からの消化管出血を認めた.腹部造影CTで膵癌再発所見を認めず,膵空腸吻合部近傍に静脈瘤を認めた.SV非再建による左側門脈圧亢進を起因とした膵空腸吻合部近傍静脈瘤からの消化管出血と判断した.内視鏡的止血術およびSV圧減圧を目的とした部分的脾動脈塞栓術を施行したが奏効せず,再出血を繰り返した.保存的治療による止血は困難と判断し,残膵全摘および脾臓摘出術を施行した.術後経過は良好で,インスリン自己注射導入後,術後第24病日に退院した.術後12か月現在,消化管出血の再燃なく経過している.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2018.0186