鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の抗体治療―保険収載からの1年を振り返る
2020年3月に「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎」に初めての生物学的製剤としてデュピルマブの臨床応用が可能となった. 当院では, 内視鏡下鼻副鼻腔手術後に再発した主として重症好酸球性副鼻腔炎に対して, 多くの症例にデュピルマブを導入した. これら難治で重症度の高い症例においてもデュピルマブは投与早期から客観的な鼻茸サイズの縮小はもちろんのこと, 患者の自覚症状である高度の鼻閉の改善や内視鏡下鼻副鼻腔手術でも改善が見られなかった嗅覚障害においても早期から高い改善を示すことが明らかになってきた. 導入6カ月後のデータでは, 39症例中16症例で鼻茸スコアは0点であり, 全体の平均点も1.5点と術前の5.9...
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Published in | 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 Vol. 125; no. 3; pp. 238 - 242 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
20.03.2022
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 |
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Summary: | 2020年3月に「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎」に初めての生物学的製剤としてデュピルマブの臨床応用が可能となった. 当院では, 内視鏡下鼻副鼻腔手術後に再発した主として重症好酸球性副鼻腔炎に対して, 多くの症例にデュピルマブを導入した. これら難治で重症度の高い症例においてもデュピルマブは投与早期から客観的な鼻茸サイズの縮小はもちろんのこと, 患者の自覚症状である高度の鼻閉の改善や内視鏡下鼻副鼻腔手術でも改善が見られなかった嗅覚障害においても早期から高い改善を示すことが明らかになってきた. 導入6カ月後のデータでは, 39症例中16症例で鼻茸スコアは0点であり, 全体の平均点も1.5点と術前の5.9点に比し大幅に減少した. 嗅覚障害は導入前に嗅覚障害を訴えていた37症例中, 27例で大幅改善もしくは正常に戻った. そのほか7例で改善し, 無効で不変との症例はわずか3例であった. 治験データを参考に, 導入後6カ月経過し自他覚所見が良好なら投与間隔を4週ごとに減量し, また, 原則1年間を経過した症例は同様に減量している. デュピルマブの保険収載から1年以上が経過した. 本稿では, 上述の当科での治療成績に加えて, 国際共同試験の治験結果を供覧し, さらに現在治験中の新しい抗体治療薬まで言及し, 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の抗体治療について現時点で収集可能なエビデンスを紹介し, 若干の考案も加えて総説とした. |
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ISSN: | 2436-5793 2436-5866 |
DOI: | 10.3950/jibiinkotokeibu.125.3_238 |