薬物乱用と「合法ドラッグ」

今日,コカインや覚せい剤などの薬物乱用問題は世界的な取り組の対象となっている。わが国においても,一時,減少傾向にあった覚せい剤の乱用者数が,特にこの数年,増加傾向と低年齢化を示しており危機に直面している。こうした,乱用される薬物は,生体に摂取されることにより,その薬理作用による高揚感や多幸感などの精神的「満足感」を引き起こす。脱し難い薬物依存の形成機序はともかくとして,薬物乱用はこの自覚効果の再体験への欲求にもとづく行動と考えられている。ところで近年,コカインや覚せい剤などのように麻薬及び向精神薬取締法などの法規の取締対象物として所持や使用が厳しく規制を受ける「違法な薬物」とは別に,これらの法...

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Bibliographic Details
Published inThe Journal of Toxicological Sciences Vol. 24; no. 5; pp. App147 - App158
Main Authors 関田, 清司, 井上, 達
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本毒性学会 1999
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ISSN0388-1350
1880-3989
DOI10.2131/jts.24.5_App147

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Summary:今日,コカインや覚せい剤などの薬物乱用問題は世界的な取り組の対象となっている。わが国においても,一時,減少傾向にあった覚せい剤の乱用者数が,特にこの数年,増加傾向と低年齢化を示しており危機に直面している。こうした,乱用される薬物は,生体に摂取されることにより,その薬理作用による高揚感や多幸感などの精神的「満足感」を引き起こす。脱し難い薬物依存の形成機序はともかくとして,薬物乱用はこの自覚効果の再体験への欲求にもとづく行動と考えられている。ところで近年,コカインや覚せい剤などのように麻薬及び向精神薬取締法などの法規の取締対象物として所持や使用が厳しく規制を受ける「違法な薬物」とは別に,これらの法的規制外で、多幸感や気分の高揚が得られるなどとの標傍のもとに,いわゆる「合法ドラッグ」と称する「商品」が流通している実態がある。現在取締対象となっている「乱用薬物」も、多くは今日の「合法ドラッグ」に似た位置づけにあったものと考えられるので、本稿では,代表的な「乱用薬物」であるコカインや覚せい剤などが乱用される機構を整理し,それらが法規制の対象になるに至った経緯などについて通覧することにより,今日の「合法ドラッグ」の性質やその危険性を明らかにすることを目的としている。
ISSN:0388-1350
1880-3989
DOI:10.2131/jts.24.5_App147