アスコルビン酸を用いた電子顕微鏡観察のための脱灰法
アスコルビン酸による脱灰法を用いて, 哺乳類の未完成の歯を脱灰し, 透過電子顕微鏡で観察した。エナメル質と象牙質の所見をEDTAによって脱灰したものと比較し, アスコルビン酸脱灰法の特徴を検索した。 L-アスコルビン酸はイヌの歯胚をEDTAの4~5倍の速さで脱灰した。また,エナメル質と象牙質の有機基質をEDTAと同様,良好に保存した。特に, エナメル質基質は脱灰後に著明に残った。大きな脱灰速度と有機基質の保存性は, アスコルビン酸脱灰法のすぐれた特性である。大きな脱灰速度は研究の能率を上げ, また脱灰中の試料からの種々の物質の好ましくない溶出を防ぎ, 試料の変化を最小におさえ, また, 有機基...
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Published in | 歯科基礎医学会雑誌 Vol. 25; no. 3; pp. 691 - 699 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
歯科基礎医学会
1983
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0385-0137 |
DOI | 10.2330/joralbiosci1965.25.691 |
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Summary: | アスコルビン酸による脱灰法を用いて, 哺乳類の未完成の歯を脱灰し, 透過電子顕微鏡で観察した。エナメル質と象牙質の所見をEDTAによって脱灰したものと比較し, アスコルビン酸脱灰法の特徴を検索した。 L-アスコルビン酸はイヌの歯胚をEDTAの4~5倍の速さで脱灰した。また,エナメル質と象牙質の有機基質をEDTAと同様,良好に保存した。特に, エナメル質基質は脱灰後に著明に残った。大きな脱灰速度と有機基質の保存性は, アスコルビン酸脱灰法のすぐれた特性である。大きな脱灰速度は研究の能率を上げ, また脱灰中の試料からの種々の物質の好ましくない溶出を防ぎ, 試料の変化を最小におさえ, また, 有機基質の良好な保存性はエナメル質超徴形態の発生学的検索に有用であろうことが示された。さらに, アスコルビン酸脱灰法は,EDTA脱灰法と競合することなく, 硬組織研究のための新しい方法の一つとして発展性があることが示された。 |
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ISSN: | 0385-0137 |
DOI: | 10.2330/joralbiosci1965.25.691 |