胸部打撲を伴う転落事故による食道損傷の30年後に生じたverrucous carcinomaの1例

症例は71歳の男性で,30年前に事故で胸部中部食道を損傷し,狭窄を生じていた.嚥下困難増悪の精査で,狭窄部に乳頭状腫瘍が指摘された.生検では炎症や癌が鑑別であったが,数回検査しても確定診断に至らなかった.CTでは不整な壁肥厚と,穿通による肺炎が認められた.癌が否定できず,通過障害や肺炎の原因であるため,手術を行った.腫瘍は浮腫状で柔らかく,胸腔洗浄細胞診,106recリンパ節の迅速診断は陰性であり,定型的な郭清は省略し胸部食道亜全摘を施行した.巨大な疣贅状の腫瘍で,HE染色では扁平上皮の層構造は比較的保たれていたが,粘膜下層に芽出様浸潤が見られた.免疫染色検査で基底層がp53,p63,Ki67...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 52; no. 5; pp. 247 - 256
Main Authors 高須, 香吏, 増尾, 仁志, 杉山, 聡, 窪田, 晃治, 藤原, 正之, 唐澤, 文寿, 中山, 中
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.05.2019
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2018.0090

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Summary:症例は71歳の男性で,30年前に事故で胸部中部食道を損傷し,狭窄を生じていた.嚥下困難増悪の精査で,狭窄部に乳頭状腫瘍が指摘された.生検では炎症や癌が鑑別であったが,数回検査しても確定診断に至らなかった.CTでは不整な壁肥厚と,穿通による肺炎が認められた.癌が否定できず,通過障害や肺炎の原因であるため,手術を行った.腫瘍は浮腫状で柔らかく,胸腔洗浄細胞診,106recリンパ節の迅速診断は陰性であり,定型的な郭清は省略し胸部食道亜全摘を施行した.巨大な疣贅状の腫瘍で,HE染色では扁平上皮の層構造は比較的保たれていたが,粘膜下層に芽出様浸潤が見られた.免疫染色検査で基底層がp53,p63,Ki67強陽性で,核異型・核分裂があり,verrucous carcinoma(以下,VCと略記)と診断された.VCは,扁平上皮癌の亜型で,食道発生はまれである.長期経過をとった食道VCの1例を経験したので報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2018.0090