膵頭十二指腸切除後の肝管空腸吻合部静脈瘤出血に部分的脾動脈塞栓術が有効であった1例

症例は85歳の女性で,局所進行膵頭部癌(上腸間膜動脈,門脈浸潤)に対し,化学放射線療法後に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,門脈合併切除再建術を施行した.術後経過は良好であったが3か月目に下血と貧血を認めた.CTで肝外門脈閉塞(extrahepatic portal vein obstruction;以下,EHOと略記)と肝管空腸吻合部周囲に増生した側副血行路を認めた.ダブルバルーン小腸内視鏡検査で静脈瘤を肝管空腸吻合部に認め,同部からの出血と診断した.門脈圧減圧による出血予防を目的に部分的脾動脈塞栓術(partial splenic embolization;以下,PSEと略記)を施行した.その...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 54; no. 8; pp. 523 - 530
Main Authors 春名, 孝洋, 横山, 正, 丸山, 弘, 平方, 敦史, 上田, 純志, 高田, 英志, 高野, 竜太朗, 川島, 万平, 牧野, 浩司, 吉田, 寛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.08.2021
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Summary:症例は85歳の女性で,局所進行膵頭部癌(上腸間膜動脈,門脈浸潤)に対し,化学放射線療法後に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,門脈合併切除再建術を施行した.術後経過は良好であったが3か月目に下血と貧血を認めた.CTで肝外門脈閉塞(extrahepatic portal vein obstruction;以下,EHOと略記)と肝管空腸吻合部周囲に増生した側副血行路を認めた.ダブルバルーン小腸内視鏡検査で静脈瘤を肝管空腸吻合部に認め,同部からの出血と診断した.門脈圧減圧による出血予防を目的に部分的脾動脈塞栓術(partial splenic embolization;以下,PSEと略記)を施行した.その後は出血を認めていない.EHOにより生じる異所性静脈瘤出血は診断・治療の困難な致命的な合併症であるが治療法は確立していない.PSEは肝管空腸吻合部静脈瘤出血に対し一考すべき治療法である.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2020.0049