遅発性小腸狭窄により小腸切除術を要した亜急性上腸間膜静脈血栓症の1例

症例は48歳の男性で,約1か月前に左手外傷に対して鼠径部より採皮,植皮術を施行され,退院後より腹部違和感を自覚していた.腹部症状が増悪し意識障害も出現したため前医を受診し,造影CTで広範な門脈血栓症を認め,入院となった.翌日,下部消化管出血を認め,当院転院となった.転院時造影CTで上腸間膜静脈血栓症と診断された.小腸壊死は明らかでなく,抗凝固療法を開始し,約40日の経過で血栓はほぼ消失した.経口摂取開始後に嘔吐が出現したため,小腸造影および小腸3D-CTを撮影したところ上部空腸の器質的狭窄を認めた.転院後第59病日に小腸部分切除術を施行した.病理学的には血栓形成を伴う虚血性腸炎の診断であった....

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 54; no. 8; pp. 538 - 547
Main Authors 北山, 丈二, 笠原, 尚哉, 堀江, 久永, 細谷, 好則, 小泉, 大, 笹沼, 英紀, 松宮, 美沙希, 遠藤, 和洋, 佐田, 尚宏, 佐久間, 康成
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.08.2021
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2020.0114

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Summary:症例は48歳の男性で,約1か月前に左手外傷に対して鼠径部より採皮,植皮術を施行され,退院後より腹部違和感を自覚していた.腹部症状が増悪し意識障害も出現したため前医を受診し,造影CTで広範な門脈血栓症を認め,入院となった.翌日,下部消化管出血を認め,当院転院となった.転院時造影CTで上腸間膜静脈血栓症と診断された.小腸壊死は明らかでなく,抗凝固療法を開始し,約40日の経過で血栓はほぼ消失した.経口摂取開始後に嘔吐が出現したため,小腸造影および小腸3D-CTを撮影したところ上部空腸の器質的狭窄を認めた.転院後第59病日に小腸部分切除術を施行した.病理学的には血栓形成を伴う虚血性腸炎の診断であった.術後20日目に退院し,現在も再発は認めていない.本症例では,3D-CTが遅発性小腸狭窄の範囲の推定と切除範囲の決定に有用であった.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2020.0114