適切な抗生剤治療により視力を温存できた歯性感染症から生じた眼窩蜂窩織炎と敗血症性肺塞栓症の1例

眼窩蜂窩織炎は,病原微生物によって眼窩軟部組織に生じる急性化膿性炎症である.歯性感染症から生じた眼窩蜂窩織炎は,頻度は稀ながら失明や死亡に至る場合が多い.今回我々は適切な抗生剤加療で視力を温存できた歯性感染症から生じた眼窩蜂窩織炎と敗血症性肺塞栓症の1例を経験した.症例は72歳男性.左眼瞼腫脹を主訴に眼科を受診した.右視力0.7,左視力0.125で,左眼瞼周囲の発赤と著明な眼球結膜充血を認めた.体温37.6度で,全身検索を行い血液検査と画像検査から敗血症性肺塞栓症と診断され,左上大臼歯周囲の歯周炎が感染源と考えられ抗生剤加療を開始した.血液培養で Streptococcus constella...

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Published in岩手医学雑誌 Vol. 75; no. 5; pp. 181 - 186
Main Authors 黒坂, 大次郎, 片桐, 紘, 小笠原, 聡, 大島, 広之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 岩手医学会 01.12.2023
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ISSN0021-3284
2434-0855
DOI10.24750/iwateishi.75.5_181

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Summary:眼窩蜂窩織炎は,病原微生物によって眼窩軟部組織に生じる急性化膿性炎症である.歯性感染症から生じた眼窩蜂窩織炎は,頻度は稀ながら失明や死亡に至る場合が多い.今回我々は適切な抗生剤加療で視力を温存できた歯性感染症から生じた眼窩蜂窩織炎と敗血症性肺塞栓症の1例を経験した.症例は72歳男性.左眼瞼腫脹を主訴に眼科を受診した.右視力0.7,左視力0.125で,左眼瞼周囲の発赤と著明な眼球結膜充血を認めた.体温37.6度で,全身検索を行い血液検査と画像検査から敗血症性肺塞栓症と診断され,左上大臼歯周囲の歯周炎が感染源と考えられ抗生剤加療を開始した.血液培養で Streptococcus constellatusが検出され,感受性の高い抗生剤で肺塞栓症は軽快した.眼窩蜂窩織炎は,当初MRIで左眼窩部に多発する膿瘍を認め,眼球は前方に圧排され視神経症を来たし左視力は0.01に低下したが,全身の改善にやや遅れて膿瘍も縮小し,視力0.2と改善した.眼窩蜂窩織炎では,早期から全身検索を進め,適切な抗生剤加療を行うことが重要と思われた.
ISSN:0021-3284
2434-0855
DOI:10.24750/iwateishi.75.5_181