収納家具操作における高齢者の最大筋力
江戸時代に現在の箪笥の原形と言われるものが出現し, それが民衆化された明治時代1)を経て, 現在に至るまで収納家具の形はほとんど変化がみられない. また, 使いやすいとされる収納家具のモジュールは, 身長や動作域から算出されたものであり, 力の大きさが考慮されたものではない. 高齢者は, 若齢者と身長が同じであっても加齢と共に筋力は減少しており, それらのデータから高齢者が使用する収納家具を設計するのは適切ではないと思われる. 高齢者など力が劣る使用者にとって使いやすい収納家具を考えるには, 高齢者の出し得る筋力を把握する必要がある. しかし, 現在では, 高齢者の筋力については握力や把持力な...
Saved in:
Published in | 日本生理人類学会誌 Vol. 3; no. 2; pp. 77 - 84 |
---|---|
Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本生理人類学会
1998
Japan Society of Physiological Anthropology |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1342-3215 2432-0986 |
DOI | 10.20718/jjpa.3.2_77 |
Cover
Summary: | 江戸時代に現在の箪笥の原形と言われるものが出現し, それが民衆化された明治時代1)を経て, 現在に至るまで収納家具の形はほとんど変化がみられない. また, 使いやすいとされる収納家具のモジュールは, 身長や動作域から算出されたものであり, 力の大きさが考慮されたものではない. 高齢者は, 若齢者と身長が同じであっても加齢と共に筋力は減少しており, それらのデータから高齢者が使用する収納家具を設計するのは適切ではないと思われる. 高齢者など力が劣る使用者にとって使いやすい収納家具を考えるには, 高齢者の出し得る筋力を把握する必要がある. しかし, 現在では, 高齢者の筋力については握力や把持力など汎用的なデータが主で, 現実的な動作に基づいて測定されたデータは少ない. 高齢者を含めた最大筋力を扱った研究は古瀬ら2)や, 遠藤ら3)の研究がある. しかし, これらの研究は, 建築金物や把手を扱うための力を想定しており, 必ずしも把持力に頼らない収納家具の引出し等を扱う力に応用するのは難しいと思われる. また, 谷口4)の研究における, 指先で引っ掛けて動かす力が引出しの開閉に関わると思われるが, 家具の操作時には第1指も使用し引出しや扉などを掴むため, 第2, 3, 4指での操作を扱った当研究は, 日常の家具操作に応用するのは難しいと思われる. |
---|---|
ISSN: | 1342-3215 2432-0986 |
DOI: | 10.20718/jjpa.3.2_77 |